不動産業は未経験でも開業できる?必要な準備や失敗しないポイントを解説
不動産業の開業に興味はあるものの「未経験でも本当にできるのか?」と不安を感じてはいないでしょうか。確かに、開業するには資格取得や資金の準備、事務所設置など、乗り越えるべきハードルがいくつも存在します。
しかし、これらを正しく理解し、さらに必要なスキルを磨いて戦略をしっかり準備すれば、未経験でも不動産業を始めることは十分可能です。
本記事では、開業に必要な準備や求められるスキル、未経験者が失敗を防ぐためのポイントを解説します。
目次[非表示]
- 1.未経験で不動産業の開業は可能?
- 2.不動産業の開業に必要な準備
- 2.1.宅地建物取引士の資格取得
- 2.2.開業資金の用意
- 2.2.1.・宅地建物取引業免許の申請手数料
- 2.2.2.・供託金
- 2.2.3.・法人設立費用
- 2.2.4.・事務所設置費用
- 2.3.事務所の設置
- 3.開業する際に必要なスキル
- 4.未経験開業で失敗しないポイント
- 4.1.徹底したマーケティング
- 4.2.同業者とのつながり
- 5.まとめ
未経験で不動産業の開業は可能?
未経験で不動産業を開業することは可能です。ただし、最低限、宅地建物取引士(以下、宅建士)の資格取得、開業資金の確保、要件を満たす事務所の設置、という3つのハードルをクリアしなければなりません。
また、開業できたとしても、継続的に安定した売り上げを生み出すには、営業スキルや集客力が不可欠です。特に未経験の場合、人脈や業界知識が少ないため、開業直後は苦戦を強いられる可能性があります。
そこで、必要なスキルや成功するための戦略をあらかじめ理解しておくことが、不動産業での失敗を防ぐうえで重要になります。
不動産業未経験であっても開業は可能です。開業には満たすべき要件があり、また安定して経営を継続するには、十分な準備が必要です
不動産業の開業に必要な準備
ここでは、不動産業の開業に必要な、宅建士資格の取得・開業資金の準備・事務所の設置の3つについて解説します。
宅地建物取引士の資格取得
不動産業の開業にあたっては、事務所ごとに専任の宅建士を配置する必要があります。
しかし、開業当初から有資格者を雇うのは、資金的に難しい場合が多いと思われます。そのため、開業を目指す本人が宅建士の資格を取得し、事業を始める方法が現実的でしょう。
宅建士試験に合格した後は、1つの都道府県に事務所を設置する場合は都道府県知事に、複数の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通省に、資格登録を申請します。
申請が受理され、宅地建物取引士証の交付を受けると、宅建士としての業務が可能になります。
ただし、この資格登録には試験合格だけでなく、「2年以上の実務経験」または「登録実務講習の修了」のいずれかが必要です。不動産業が未経験の場合でも、登録実務講習を修了することで登録要件を満たせば、実務経験なしで宅建業の開業が可能になります。
開業資金の用意
不動産業を開業するには一定の初期費用がかかるため、開業資金を用意しておく必要があります。主な初期費用の項目は以下のとおりです。
・宅地建物取引業免許の申請手数料
不動産業を営むために必要な、宅建取引業免許の申請には手数料がかかります。
事務所を1つの都道府県に設置する場合は3万3,000円(電子申請の場合は2万6,500円)、複数の都道府県に事務所を設置する場合は9万円の手数料が必要です。
・供託金
不動産業の開業にあたっては、万が一の場合に顧客への補償に充てる供託金を納付しなければなりません。営業保証金として自ら供託する場合、主たる事務所は1,000万円、従たる事務所は1ヶ所当たり500万円が必要です。
一方、保証協会に加入し分担金を納付する方法であれば、主たる事務所は60万円、従たる事務所は1ヶ所当たり30万円で済みます。この分担金に加え、入会金や年会費が必要となるため、総額で130万〜180万円ほどの資金が必要になります。
・法人設立費用
法人として開業する場合、株式会社を設立する際に、登記費用や定款認証費用などでおよそ25万円が必要です。また、設立に関する各種手続きを行政書士や司法書士に依頼する場合は、別途10万円程度の報酬支払いが発生します。
・事務所設置費用
事務所を借りる場合は、敷金や礼金のほか、賃料も併せて発生します。一方で、一定の条件を満たすことで自宅の一部を事務所にすることも可能で、この方法では費用を大きく抑えられます。
また、パソコンやデスクなどの備品を所有していない場合は、別途購入費がかかります。事務所設置にかかる費用は、物件の状況や設備の有無などで大きく変わるといえます。
事務所設置費用を除いた初期費用は170万円〜230万円ほどと予想され、これを合わせた金額を開業資金として用意する必要があります。
項目 |
費用の目安 |
---|---|
宅地建物取引業免許の申請手数料 |
2万6,500円~9万円 |
宅建協会入会金 |
130万~180万円 |
法人設立費用 |
35万円程度 |
事務所設置費用 |
状況による |
事務所の設置
不動産業の開業には、法令で定められた要件を満たす事務所の設置が必要です。事務所は継続して使用できることに加え、外部から独立した空間であることが求められます。
具体的には、生活空間や他企業のスペースと明確に分離され、外部から直接出入りできる専用の出入り口が設けられている必要があります。
これらの条件を満たせば、自宅の一部やシェアオフィスを不動産業の事務所として登録することも可能です。
事務所は、継続的に業務を行うことができる施設である必要があります
≫ 【不動産業の開業ノウハウ】事務所の設置要件について
≫ 不動産開業資金の融資を受けるには? 必要条件と審査の流れを徹底解説
≫ 不動産売買仲介・賃貸仲介のビジネスモデルと成功のポイント
開業する際に必要なスキル
不動産業を開業し、安定した経営を行っていくには、実際に売り上げを生み出すためのスキルも必要です。ここでは、特に重要な2つのスキルについて解説します。
営業スキル
営業スキルは、契約を獲得するための重要な能力です。対面や電話、メールなどを通じて顧客と信頼関係を築き、相手のニーズを的確にくみ取りながら、最適な物件を提案する力が求められます。
特に未経験で不動産業を始める場合は、限られた商談機会を確実に成果につなげる意識が大切です。問合せへの迅速な対応や、小さな約束を着実に守る姿勢など、丁寧な対応の積み重ねが信頼を築き、成果へとつながっていくでしょう。
Web集客スキル
未経験で不動産業を開業する場合、知名度や既存顧客がない状態からのスタートとなります。そこで、大きな武器になるのが、Webを活用した集客スキルです。
自社サイトを整備し、物件情報に加えて地域情報などの役立つコンテンツを発信すれば、顧客の注目を集めやすくなります。
さらに、不動産ポータルサイトに物件を掲載したり、また、SNSを活用して日々の業務風景やお客さまの声を発信すれば、親しみや信頼の獲得につながるでしょう。また、物件内部の様子を動画で投稿すると、顧客にとって有益な情報になり問合せが増える可能性もあります。
こうした情報発信は集客に効果的なだけでなく、商談の円滑化にも貢献するはずです。
成約に結びつけるためには、集客、また来店されたお客さまへの営業・接客スキルは経営において重要なスキルであるといえます
≫ 「営業力」に関連した記事一覧
≫ 「集客・反響獲得」に関連した記事一覧
未経験開業で失敗しないポイント
未経験での開業を成功させるには、実績や信頼の不足を補う戦略が欠かせません。ここでは、集客の基盤となるマーケティングと、物件獲得や地域情報の収集に役立つ人脈づくりについて解説します。
徹底したマーケティング
未経験で不動産業を開業する場合、感覚ではなく客観的なマーケティングに基づいた戦略を立てることが重要です。まず、地域住民の特性やニーズ、競合状況などを調査し、どのような不動産取引に需要があるかを見極めます。
そのうえで、賃貸か売買か、土地のみか建物付きか、さらに賃貸であれば店舗か住宅か、住宅なら単身者向けかファミリー向けかなど、注力すべき分野を明確にします。
開業初期は一人でこなさなければならない業務が多いため、取り扱う分野を絞り、需要の高い領域に集中すると、効率的に成果を上げやすくなるでしょう。
同業者とのつながり
開業直後は自社で扱える物件が限られるため、ほかの不動産会社の物件を仲介するケースが多くなります。そのため、同業者とのつながりを築くことが重要です。
物件情報の共有や、顧客の紹介を受ける機会が増えるほか、市場動向や地域の情報を得るという側面でも、同業者とのつながりは役立ちます。
近隣の同業者への定期的なあいさつ回りや、不動産関連の懇親会・勉強会への参加を通じて、ネットワークを広げましょう。孤立せず、情報や協力を得られる関係性を築くことが、開業初期の安定経営につながります。
事業者向け交流会や懇親会などは、人脈を広げるチャンスとなります。経営に役立つ有益な情報や、人とのつながりが得られる可能性もあるでしょう
≫ 不動産業界のビジネスモデルとは?全体像と各事業内容を解説
≫ 不動産売買仲介・賃貸仲介のビジネスモデルと成功のポイント
≫ 不動産賃貸管理業のビジネスモデルを解説! 成功するためのポイントを紹介
まとめ
不動産業は、未経験からでも開業可能です。ただし、開業には宅建士の資格取得や開業資金の準備、事務所設置など、必要な条件を確実に満たすことが前提となります。
さらに、営業力やWeb集客といった売り上げに直結するスキルも、安定した経営には欠かせません。また、地域の需要を見極めるマーケティングや、同業者とのネットワーク構築といった戦略的な視点も大切です。
未経験者こそ、最初の準備と方向性の定め方が成功を左右します。しっかりと準備を整え、失敗しない開業を目指しましょう。
■関連記事
≫ 「不動産開業・独立」に関連した記事一覧
≫ 不動産開業は1人でも可能? 成功するための3つの実践ポイントを徹底解説
≫ 不動産業界で独立したい! 開業に必須・役立つ資格10選を紹介
LIFULL HOME'S Businessでは、不動産業界に関連したコラムやセミナー情報なども公開しております。ぜひご覧ください。
≫ LIFULL HOME'S Businessコラム
≫ LIFULL HOME'S Businessセミナー一覧