スマートロックで鍵管理の業務を削減。入居者と管理会社のメリットは
賃貸管理・賃貸仲介の日常業務において、鍵借りや引き渡しなど、鍵にかかわる業務は多くあります。特に賃貸管理業においては、管理戸数が多くなればなるほど鍵庫スペースの確保が必要になり、管理業務にかかる手間も増える一方です。一部の企業で導入が進むスマートロックですが、あらためてその仕組みやメリットについて確認してみましょう。
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スマートロックの仕組み
スマートロックとは、スマートフォンなどのデバイスなどでドアを解錠・施錠するシステムの総称です。後付けで玄関ドアの鍵に工事をして設置するものや、両面テープなどで簡易的に取り付けるもの、もともとドアに電気錠が組み込まれているものなど、さまざまな製品があります。2015年ごろに多くの企業で製品がリリースされ、住宅以外に、入退室が頻繁にあるシェアオフィスや貸し会議室、民泊などでも利用されています。
賃貸領域でも多くの導入実績があるビットキーのスマートロック
分譲マンションや賃貸物件などで、少しずつ導入事例が増えているスマートロックですが、特に賃貸の大手管理会社などの導入実績が豊富にあるのが株式会社ビットキーです。ビットキーは2018年創業、つなげることで人がもっと自由になれることを目指し、主に「暮らし」「仕事」の領域で事業を展開。今回は主に「暮らし」、住宅のなかでも賃貸領域でのスマートロックについて、執行役員VP homehub事業本部長 稲熊 悠人氏にお話を聞きました。ビットキーが提供するhomehubプラットフォームを介して、入居者や賃貸管理会社はそれぞれ、鍵の解錠・施錠と連動したサービスを利用することができます。
スマートロック導入のメリットは?
稲熊氏は、ビットキーのスマートロック導入のメリットについてこう話します。
「管理会社や入居者はもちろん、物件が空き室の状態であればクリーニング会社や内見を案内される仲介会社など、賃貸物件に関わるステークホルダーは多くいらっしゃいます。すべての方にもたらす価値としていえるのが、『便利さ』と『安心・安全』です」
賃貸管理の業務効率化に大きく貢献
「ビットキーのhomehubというコネクトプラットフォームは、単純に鍵を電子化するスマートロックだけではなく、それに紐づく仲介業務や管理業務をDX化することを実現します。物件のステータスが入居になった際の鍵の引き渡しや、空き室になった際の内見案内やクリーニングなど、それぞれのステータスで必要な業務上、安全に鍵の権限を移動できることが、われわれのシステムの強みといえます」(稲熊氏)
特に、入退去や物件の内見などが頻繁に行われる繁忙期において、管理物件が多い管理会社は、そのぶん鍵管理業務に追われてしまうことも多くあるでしょう。ですが、管理物件が多い場合、業務効率化が図れた場合の効果はその分大きくなるようです。
「レオパレス21様は、物理鍵管理の手間が1 戸あたり平均42 分かかっておりましたが、homehub および、連携するスマートロックを導入いただき、2024 年の繁忙期(2024 年1 月1 日~3 月31 日)において約5 万8,000 件の物理鍵の受渡し※が不要となりました。2023 年度は鍵管理の時間を年間14 万時間削減できており、大きく業務の効率化を図ることができております」(稲熊氏)
※: 入退去時の入居者との受け渡し、退去後の原状回復業者との受け渡しの合計 など、カウント対象となる情報を記載
参考:レオパレス21、スマートロックの導入で繁忙期3 ヶ月の鍵受け渡し5 万件超を削減
「私自身、管理会社の方とお話をさせていただく機会が多いのですが、3月の下旬など、物件の出入りが特に多い時期は、店頭に入居者の方の行列ができることもあるそうです。鍵の引き渡しの際、受領証の準備やサインなどで時間がかかるためですが、結果的にそれば入居者の方にとっても不便であると思います」(稲熊氏)
参考:レオパレス21、スマートロックの導入で繁忙期3 ヶ月の鍵受け渡し5 万件超を削減
入居者は特にセキュリティ面でのメリットも
前述の事例では、入居者は、これまで入居前に店舗に立ち寄り鍵を受け取る必要がありましたが、スマートロック導入物件では、入居前日に招待メールに記載されたURLからhomehub アプリのアカウントを作成するだけでデジタルキーを受け取ることができます。店舗への移動時間や受け取りの時間が不要になり、入居者にとってのメリットといえるでしょう。
「入居者の方たちや、ご利用頂いている方などからは、主に『便利さ』と『安心・安全』で好評をいただいています。利便性に関してはスマートフォンや暗証番号、カードキーなどでも解錠でき複数の方法が選べること。また、鍵の閉め忘れが心配になることもあるかと思いますが、オートロック機能で施錠忘れを防ぐことができます。安全性に関しては、入退室がログとして残りますので、何かあった場合に履歴を追うことができます」(稲熊氏)
例えば友人などを家に招き入れたいときに、homehubアプリを介して一時的に回数や時間などを指定して鍵を受け渡すことも可能です。渡した鍵は後から削除することもでき、利便性もあり、かつ安全性も考えられているといえるでしょう。
従来の入居者の鍵受取フロー
スマートロック付き物件の鍵受取フロー
内見案内、物件清掃や原状回復もスムーズに
物件に関わる人、例えば賃貸物件の内見を案内する賃貸仲介会社、物件清掃や原状回復をする人など、その都度、鍵の受け渡しが必要だったものが、homehubを介して一時的な解錠パスコードを付与すれば、鍵の貸し借りは不要に。有効期限が切れると自動的に番号が変更されるので、安全性も担保することができます。
不動産業界でよく利用されるキーボックスですが、暗証番号を変更するには、やはり現地に出向かなくてはいけません。利用頻度が高い場合は頻繁に暗証番号を変える必要がありますが、繁忙期の時期などは、なかなか対応しきれていないという不動産会社の方もいらっしゃるかもしれません。空き室が犯罪に利用されるリスクもあり、鍵の管理は不動産会社にとって利便性をとるか安全性をとるか、難しい課題といえるかもしれません。
キーボックス(イメージ画像)
新築物件、既存物件どちらでも導入が可能
「スマートロックは、新築物件に限らず、既存物件にも導入が可能です。ビットキーはいくつかの製品があり、ご希望に応じて物件ごとに適した製品をご提案させていただきます。例えば、引き戸の、つまみを上下にして鍵を開け閉めするタイプや、ドアノブにサムターンが結合したタイプのものですと設置が難しい場合もありますが、そういった場合は錠前の変更で対応することになります。不動産会社向けの管理システムを用意しており、設定方法や操作方法を弊社の導入支援チームがレクチャーし、その後もサポートさせていただきます」(稲熊氏)
管理物件戸数が多い企業では、自社で独自の基幹システムを開発していたり、もしくは入稿システムなどを利用していたりするケースもあるでしょう。その場合、ビットキーでは、既に不動産会社がお使いの賃貸管理システムとhomehubの管理システムを連携させることが可能で、賃貸管理システムを操作するだけで、入退去のステータス管理や鍵の付与などを行うことができるようになるそうです。
「スマートロックは、不動産業界に残されたDX効果の高い領域」と、稲熊氏は言います。オンライン内見やIT重説など、IT化が進みつつある不動産業界ですが、スマートロック導入物件はまだまだ多いとは言えません。もちろんオーナーの意向などもあり簡単にはいかないかもしれませんが、「鍵のDX」が実現した場合、賃貸管理業務は大きく変化を遂げるかもしれません。
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