賃貸経営で活用できる! 一人暮らしの高齢者見守りサービスと導入メリット
高齢化が進み、一人暮らしの高齢者世帯が増え続けていることもあり、昨今ではさまざまな見守りサービスが提供されています。高齢者数は今後も増加が見込まれることから、安定した賃貸経営を行うためにも高齢者の入居対策は重要です。
訪問や電話による見守りサービスだけでなく、デジタルツールを活用したさまざまなサービスをうまく活用することは、入居者だけでなく賃貸オーナーにもメリットがあります。
この記事では、一人暮らしの高齢者見守りサービスについて、導入メリットから具体的なサービスまでを解説します。
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一人暮らしの高齢者見守りサービスの必要性
高齢化社会が進む日本では、一人暮らしの高齢者は年々増加傾向にあります。総務省による調査によると、65歳以上の一人暮らしの高齢者数は、2020年時点で約671万人に上り、2040年には896万人まで増え、およそ4~5人に1人が一人暮らしとなる見通しです。その一方で、高齢者を見守る環境整備や担い手の確保は難しくなっています。
高齢者の事故は、段差につまずいたり風呂場で倒れたりなど、自宅内でも発生しやすく、同居家族がいなければすぐに異変に気づかれません。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大期には、訪問による見守り活動の多くが中止されました。この時期は都道府県をまたぐ移動が難しくなり、遠方に暮らす親などを訪問することも困難となる状況が見られました。
その後、デジタルツールや電話、はがきの活用など、見守り活動の方法について見直しが実施されています。このような背景から、高齢者を見守るサービスの必要性は年々高まっているといえます。
(出典:総務省「一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査 結果報告書」p.68)
見守りサービスとは?
見守りサービスとは、遠方に住む高齢の親などを、家族に代わってサポートするサービスです。サービス内容や料金は事業者によって異なります。直接訪問からセンサーやカメラ、緊急通報システムを活用したもの、あるいは宅配を利用するものまで方法はさまざまです。
見守りサービスには介護保険が適用されないため、サービス利用料は原則として自己負担となります。
自治体における一人暮らしの高齢者見守りの取り組み
地方自治体でも、一人暮らしの高齢者を見守るさまざまな取り組みが実施されています。
民生委員や社会福祉協議会などの訪問による安否確認や健康状態の確認などに加え、郵便局やガス事業者などの民間事業者と提携し、異変に気づいた場合に報告してもらう取り組みも実施されています。
また、安否確認や日常生活の状況確認、健康相談などは、直接の訪問だけでなく、さまざまなデジタルツールが活用されています。
具体的には、室内に設置したセンサーを通して高齢者の異変を察知するものから、タブレット端末を介して本人と会話することで状況確認を行えるもの、急病や事故の際に緊急通報ボタンを押すだけで事業者と通話ができるサービスなどです。
このような取り組みが進む一方で、訪問による見守り活動を行う人材の確保が難しい、またデジタルツールを活用した場合でも、万が一の際に誰が高齢者の自宅に出向いて安否確認するかなど、人材面での課題があります。
直接の訪問だけでなく、さまざまな見守りの方法が活用されています
一人暮らし高齢者見守りサービス導入のメリット
見守りサービスの導入は、入居者やその家族が安心できるだけでなく、賃貸オーナーにとってもメリットがあります。
入居率向上・空室対策になる
見守りサービスを導入することで高齢者を幅広く受け入れることができれば、入居率の向上や空室対策になります。
賃貸住宅への入居基準はオーナーが決めます。高齢者の入居にあたっては、室内での事故や孤独死などのリスクを考え、入居基準を厳しくするオーナーもいるでしょう。
特に一人暮らしの場合は、急に体調が悪くなった場合、あるいは事故が起こった場合にすぐに発見されにくいこともあり、受け入れに消極的にならざるを得ないという実情があります。
そこで、見守りサービスを導入することで高齢者の生活をサポートできれば、受け入れられる高齢者の幅を広げることができるでしょう。高齢者は長期の入居を見込みやすいため、入居率の向上も期待できます。
社会的孤立の解消・孤独死の防止につながる
見守りサービスを導入することは、高齢者の社会的孤立を解消し、孤独死の防止につながります。
総務省の調査では、「ふだん親しくしている友人や仲間の有無」について、一人暮らしの高齢者のおよそ30%が「ほとんど持っていない」「持っていない」と回答しています。
見守りサービスを導入し、定期的な訪問や電話、デジタルツールを利用した会話を行うと、安否確認だけでなく、入居者の社会的孤立を防ぎやすくなるでしょう。
また、万が一室内で亡くなってしまった場合、発見までの期間が長ければ長いほど原状回復費用もかかります。見守りサービスを導入することで、孤独死の防止だけでなく、亡くなったことに気づくまでの時間短縮を期待できます。
(出典:総務省「一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査 結果報告書」p.70)
防犯対策につながる
部屋にセンサーやカメラ、緊急通報システムを導入することは、防犯対策にも役立ちます。
一般の家族世帯と比べると、高齢者の一人暮らしは隙が生じやすく、犯罪被害に遭うリスクも高い傾向にあります。
空き巣などの侵入犯罪だけでなく、年齢とともに判断力が低下してくると詐欺などの被害にも遭いやすくなるのです。
このような背景もあり、カメラで高齢者の状況を見守れるサービスや、定期的に会話できるサービスを導入することは防犯対策につながるため、入居時のメリットとして訴求することが可能です。
高齢者の見守りサービス紹介
高齢者の見守りサービスにはいくつかのタイプがあります。ここからは、それぞれの特徴と具体例を解説します。
センサー型
センサー型は、家電や浴室、トイレなどの住宅設備にセンサーを取り付け、利用するたびにセンサーが感知し、離れて暮らす家族に利用情報が提供されるタイプです。電気のスイッチで安否確認ができるタイプもあります。
●センサー型のサービス例:東京ガスの「まもROOM」
トイレ等のドアの開閉が一定期間ない場合に、東京ガスから入居者へ安否確認の連絡が入ります。安否確認が取れない場合は、管理会社やオーナーなどにメールで知らせるサービスです。
初期費用はかからず、一戸から利用が可能です。万が一入居者が亡くなった場合、上限はありますが原状回復や遺品整理費用などの補償があります(2024年6月時点)。
訪問型
訪問型は、スタッフが定期的に高齢者の自宅に訪問し、安否確認するサービスです。直接状況を確認できるメリットはありますが、緊急時の対応が難しいことや訪問回数に応じて料金が高くなる点がデメリットです。
主に郵便局や電気・水道事業者のほか、セキュリティ会社がサービスを提供しています。
●訪問型のサービス例:郵便局のみまもりサービス
月1回郵便局員が訪問し、30分程度の時間をかけて、あらかじめ準備した項目に沿って質問を実施するサービスです。利用者の生活状況が、写真付きの報告書として離れて暮らす家族などに送られます。
基本料金には訪問サービス以外に入院補償が付いた「みまもり保険」や24時間医療相談ができる「メディカルアシスト」などの電話相談が含まれています(2024年6月時点)。
(出典:日本郵便「郵便局のみまもりサービス(高齢者見守り)」)
カメラ型
室内にカメラを設置し、日常の様子を確認できるサービスです。会話機能が付いているものであれば、コミュニケーションも取れます。リアルタイムで状況を確認できるため、緊急時にも気づきやすいといえます。
ただし、カメラ型は利用者のプライバシーへの配慮が必要であり、24時間見られることに抵抗を感じる人もいるでしょう。
●カメラ型のサービス例:みまもりCUBE
コンセントに差すだけで設置でき、カメラにSIMカードが内蔵されているためインターネット(Wi-Fi)環境がなくても利用可能です。
見守る側はカメラ映像を見ながら簡易的な呼びかけができます。ドアの出入りやベッドからの離床などの動きのほか、カメラ映像が一定期間変化がないことを通知する機能も付いています。
(出典:ラムロック「みまもりCUBE」)
通報型
通報型は、転倒や急病などの緊急時に通報ボタンを押すとスタッフが自宅まで駆けつける見守りサービスです。
毎日の生活や健康状態は把握できませんが、ボタンを押すだけのため、高齢者にも利用しやすいサービスです。電話回線もしくはインターネット回線を設置する必要があります。
●通報型のサービス例:ALSOK「みまもりサポート」
緊急時にボタンを押すとALSOKの警備員が駆けつけます。そのほかにも、基本料金の中に熱中症注意喚起や緊急速報メールの受信・読み上げ機能、相談ボタンを押すと24時間いつでも健康相談ができるサービスが含まれます。
(出典:ALSOK「HOME ALSOK みまもりサポート」)
まとめ|入居者の意向に沿ったサービスを導入することが大切
一人暮らし高齢者の見守りサービスについて紹介しました。導入にあたっては使いやすさや費用が大切ですが、利用者の意向や状況をしっかり把握することも大切です。
見守りのサポートを受けることに対する考え方や抵抗感は一人ひとり異なります。なかには訪問を煩わしく感じたり、プライバシー面で強い抵抗感を感じたりする人もいるでしょう。サービスを導入する際には、家族の意向も含めて本人の考えに寄り添うことが必要です。
これからの日本の状況を鑑みると、高齢者を積極的に受け入れることは、安定した賃貸経営につながるだけでなく、高齢者の住まいを確保するという社会的意義を果たすことにもつながります。ぜひ参考にしてください。
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