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国の安全保障に関わる重要土地等調査法とは? 不動産取引への影響も解説

国の安全保障に関わる重要土地等調査法とは? 不動産取引への影響も解説

国の安全保障上、防衛関係施設などの重要施設や、国境離島などの機能を阻害する可能性がある土地・建物の利用、取引を制限できる旨を定めた法律に「重要土地等調査法」(正式名称「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」)があります。

2022年(令和4年)9月施行後、不動産取引時の重要事項説明にも追加された重要土地等調査法とはどのような法律なのでしょうか。

この記事では、重要土地等調査法の概要から、具体的にどのような措置や制限があるのかについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.重要土地等調査法の概要
  2. 2.重要土地等調査法による措置・制限
    1. 2.1.注視区域・特別注視区域の指定
    2. 2.2.土地や建物の所有者・利用状況の調査
    3. 2.3.土地等の取引の事前届出
    4. 2.4.調査結果踏まえた利用規制・国による買取り
  3. 3.対象区域は重要土地ウェブ地図で確認できる
  4. 4.まとめ|重要土地等調査法の不動産取引への影響

重要土地等調査法の概要

高齢化や地方の過疎化が進む日本では、相続の際に所有権の登記が適切に行われないことや、そのまま放棄されるなどの理由で、所有者不明の土地が増加しています。このような状況のため、自衛隊の施設や米軍基地などの防衛関連施設や国境離島の周辺における土地の所有・利用に関して、国の安全保障上の懸念がありました。

そこで、安全保障上重要な施設や国境離島などの機能を阻害する土地・建物の利用を防止するため、注視区域・特別注視区域に指定された土地などの利用状況の調査や届出について定める「重要土地等調査法」が施行されました。

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重要土地等調査法概要

(出典:内閣府重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査
及び利用の規制等に関する法律

重要土地等調査法による措置・制限

それでは、重要土地等調査法によって、どのような土地・建物が対象として指定され、どのような義務や制限が生じる可能性があるのでしょうか。

注視区域・特別注視区域の指定

重要土地等調査法では、重要施設の周囲、おおむね1,000メートルの範囲内、ならびに国境離島や有人国境離島地域を構成する離島の区域を「注視区域」として指定されています。

この法律上の重要施設とは、防衛関係施設や海上保安庁の施設および生活関連施設を指します。

生活関連施設とは、国民の生活に関係する施設で、その機能が阻害された場合に国民の生命や身体または財産に重大な被害が生じるおそれのある施設です。具体的には、原子力関係施設や空港がこの生活関連施設として定められています。

また、「注視区域」に係る重要施設が特定重要施設である場合や、特定国境離島などである場合には、当該注視区域を「特別注視区域」に指定することもできます。

特定重要施設とは、重要施設の中でも、その機能が特に重要なもの、またはその機能を阻害することが容易なもので、ほかの重要施設によって代替が困難なものです。防衛関連施設の中でも、指揮中枢機能を有する施設などがこれに該当します。

(出典:内閣府重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査
及び利用の規制等に関する法律

(出典:内閣府「重要土地等調査法 区域の指定について」

土地や建物の所有者・利用状況の調査

注視区域・特別注視区域について、国は土地などの利用状況の調査を行います。

調査事項は、土地および建物の所有者、賃借人の氏名・住所・国籍、具体的な利用状況などです。現地調査のほか、不動産登記簿や住民基本台帳などを用いて調査し、必要がある場合には、所有者などに報告や資料の提出を求めることが可能です。

(出典:内閣府「重要土地等調査法の概要」

土地等の取引の事前届出

注視区域の中でも特別注視区域に該当する土地や建物については、所有権などの移転を伴う契約を締結しようとする場合、国への届出が必要です。

届出の対象となる土地・建物や契約は次のとおりです。

届出の対象となる

土地・建物

面積(建物は各階の床面積の合計)が200平方メートル以上の土地および建物
※マンションの場合、専有面積200平方メートル以上が対象
届出の対象となる
売買・贈与・交換・形成権(買戻権、予約完結権)
契約

※賃貸借契約、相続は対象外

届出の事項
・当事者の氏名、住所(法人の場合、代表者の氏名も必要)
・土地などの所在地・面積
・土地などに関する権利の種別および内容
・土地などの利用目的
・譲受け予定者の国籍など
・土地などの利用の現況
・契約予定日

届出の義務がある者

契約当事者
※売買であれば、売主・買主双方が行う必要あり

届出の期限
契約締結前


​​​​​​​届出は、土地や建物の取引自体を制限するものではありません。期限内に適切に届出を行えば、何らかの連絡や通知を待つ必要はなく、土地売買契約などを自由に締結することができます。

ただし、届出をせずに対象となる土地・建物の売買契約などを締結した場合や虚偽の届出をした場合、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される場合があります(重要土地等調査法第26条)。

なお、届出は郵送もしくはオンラインで行うことができます。届出様式の電子データや記載例などは内閣府のホームページからダウンロードが可能です。

(出典:内閣府「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」パンフレット p.4)
(出典:内閣府「重要土地等調査法 届出について」

調査結果踏まえた利用規制・国による買取り

利用状況の調査の結果、重要施設や国境離島などの機能を阻害する行為(機能阻害行為)が認められる場合、国は利用者に対して機能阻害行為の中止や必要な措置をとるべき旨を勧告できます。

機能阻害行為に該当する可能性のある行為としては、自衛隊などの航空機の離着陸やレーダーの運用の妨げとなる工作物の設置や、施設に対する妨害電波の発射などです。

さらに、勧告を受けた者が正当な理由なく必要な措置をとらなかった場合、所有者などに当該措置をとるよう命令することが可能です。

注視区域・特別注視区域における中止勧告や命令に従わない場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、あるいは両方が科される場合があります(重要土地等調査法第25条)。

なお、利用者などが勧告・命令に従って措置を講じたことで損失を受けた場合、あるいは他人に損失を与えた場合、内閣総理大臣は通常生じる損害について補償する旨が定められています(同法第10条)。

さらに、勧告などに従うことで土地などの利用に著しく支障をきたす場合、所有者からの申し出があれば、特別の事情がない限り、国はこれを買い入れるものと規定されています(同法第11条)。

(出典:e-GOV法令検索「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」

対象区域は重要土地ウェブ地図で確認できる

売買取引で取り扱う土地や建物が注視区域ならびに特別注視区域に指定されているかどうかは、内閣府のホームページや「重要土地ウェブ地図」で確認できます。

たとえば、下の地図では、米軍横田基地・横田飛行場の周辺地域に指定された特別注視区域(赤字部分)、ならびに陸上自衛隊東立川駐屯地・立川駐屯地周辺地域に指定された注視区域(青色部分)を確認できます。

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令和6年に指定される区域を含め、これまでに600近くの区域が注視区域・特別注視区域に指定されています。

(出典:内閣府「重要土地等調査法に基づく指定区域の閲覧」
(出典:内閣府「注視区域及び特別注視区域の指定について」p.24)

まとめ|重要土地等調査法の不動産取引への影響

重要土地等調査法では、国の安全保障に関わる土地・建物を重要施設として定め、その周辺地域の指定や調査を実施するとともに、施設の機能を阻害すると認められる場合などに勧告、命令を行うことができます。

また、注視区域の中でも特別注視区域に指定された土地や建物は、売買契約などの取引を行う際に事前の届出が必要です。

勧告や命令に従わない場合や、届出の規定に違反した場合、刑事罰が科される可能性があります。
そのため、不動産業務の中でこれらの対象となる不動産の取引を行う場合、契約前の重要事項説明において、どのような義務や制限が生じる可能性があるのかをしっかりと説明する必要があります。ぜひ参考にしてください。

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吉満 博
吉満 博
不動産コンサルタント・ライター。株式会社あつみ事務所 代表取締役。不動産の購入から売却まで出口戦略、資産性を踏まえ、長期の視点で不動産コンサルティング・売買仲介サービスを提供する。また、購入・住み替え前のライフプランニングから、資金計画や住宅ローン、保険の見直しなど、お金に関するセカンドオピニオンを提供。不動産・住宅ライターとして、不動産メディアを中心に、これまでの建築設計、不動産売買の経験を踏まえた記事執筆をおこなう。

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