10年超の建物は要注意! 外壁調査義務の対象建物や外壁、調査時期などを解説
外壁調査とは、建物の外壁の劣化や損傷を専門的な方法で確認する調査のことです。建築基準法により、定められたタイミングで行うことが義務付けられています。
マンションなどの共同住宅では、自治体が定める基準に適合する建物が調査対象となります。傷んだ外壁が落下して事故が起きると建物の所有者が責任を問われる可能性があるため、確実に実施しておく必要があります。
本記事では、外壁調査の概要と、対象となる建物や外壁材、実施時期などについて解説します。
目次[非表示]
- 1.外壁調査とは
- 2.調査会社の選び方
- 2.1.調査の実績を確認する
- 2.2.調査方法の説明を聞く
- 2.3.報告書の見本を見せてもらう
- 3.まとめ
外壁調査とは
外壁調査とは、建物の外壁の劣化や損傷の状態を専門的な方法によって確認し、把握するための調査です。建築基準法12条に基づいて定められている建築物などの定期調査・報告制度の一環として義務化されています。
調査の目的
外壁調査は、建物の外壁が損傷などの理由ではがれ落ち、通行人などに被害を及ぼすことを防ぐ目的で行われます。過去に発生した外壁落下事故では死亡者も発生しているため、重要な調査だといえます。
外壁調査により、外壁の落下につながる損傷を早期に発見し、補修などを行うことで、事故を未然に防ぐことができるのです。
調査対象の建物
調査対象の建物としては、不特定多数の方が利用する劇場や店舗など、また、自力避難が困難な方が利用する病院や老人ホームなどが国の政令によって指定されています。
また、特定行政庁が指定する建物もあり、このなかでマンションなどの共同住宅が指定されている場合があります。特定行政庁とは都道府県や建築主事を置く市町村などを指し、この特定行政庁によって定められた規模に該当するマンションなどは、外壁調査を行う必要があります。
たとえば東京都では、定期調査・報告が必要な建築物として、共同住宅のうち5階以上かつ床面積が1,000m2を超える建物を対象として定めています。
(出典:国土交通省 定期報告制度における外壁のタイル等の調査について)
調査の時期
外壁調査の時期については、2008(平成20)に行われた建築基準法改正によって、さらに厳格化されました。この改正では、おおむね6ヶ月から3年の間隔で行う部分的な点検に加え、タイル・石貼りなど(乾式工法を除く)・モルタルなどの外壁材は、10年に一度の全面的な打診調査を行うことが定められたのです。
以下の条件に適合し、かつ3年以内に打診調査が行われていない建物に対しては、速やかに全面的な打診を行う必要があります。
・建築物の定期調査(部分打診や目視)などで異常が認められたもの
・竣工後10年を超えるもの
・外壁改修後10年を超えるもの
・落下により歩行者などに危害を加える恐れのある部分の、全面的な打診の実施後10年を超えるもの
調査の方法
外壁調査には、主に打診調査と赤外線調査の2つの方法があります。
打診調査は、専用のハンマーで壁面を叩き、打音から外壁材の浮きや損傷を見つけ出す方法です。目視と感触による精度の高い調査が可能です。ただし、打診調査には仮設足場の設置やゴンドラ、高所作業車が必要になる場合があり、コストが高くなる傾向があります。
一方の赤外線調査は、赤外線カメラで建物を撮影し、サーモグラフィー画像を解析することで外壁材の浮きなどを調べる方法です。離れた場所からも調査できるため、足場などが不要であり、コストを抑えられる点がメリットです。
ただし、画像による調査のため、外壁を直接調べる打診調査に比べ調査精度が劣る可能性があります。また、外壁の温度差が少ない冬場は調査が困難になる場合もあります。
テストハンマーによる外壁の打診調査。打音から外壁材の浮きや損傷を見つけます
調査対象の箇所
外壁調査の対象となる箇所は、落下によって歩行者などに危害が及ぶ恐れのある部分です。
具体的には、「該当する壁面の前面、かつ壁面の高さのおおむね2分の1の水平面内に、公道や不特定多数の方が通る私道、構内通路、広場などがある場合」と、国の指針によって定められています。
ただし以下の部分は除かれます。
・壁面の下に強固な屋根やひさしなどの落下物を防ぐ施設が設置されている部分
・植え込みなどで落下が影響する角度の範囲が完全に遮られ、危険性がないと判断される部分
調査会社の選び方
ここでは、確実な調査を期待できる調査会社の選び方を3つご紹介します。
調査の実績を確認する
外壁調査の依頼先を選ぶ際は、その調査会社がどれくらいの調査実績があるのかを確認しましょう。
外壁調査は、実際に調査を行うことで経験として精度が高まっていく部分があります。そのため、豊富な実績があれば、より精度の高い調査が期待できます。将来の外壁落下のリスクを回避し、建物の安全性を確保できるようになります。
調査方法の説明を聞く
外壁の調査会社を検討する際は、調査方法についてしっかりと説明してもらいましょう。
各調査方法のメリット・デメリットや、提案した調査方法を選んだ理由を納得できるように説明できる調査会社なら、専門知識が豊富で経験値も高いと判断できます。
また、丁寧にわかりやすく説明してくれる姿勢が見えれば、調査においても誠実な取り組みを期待できるでしょう。
報告書の見本を見せてもらう
外壁調査をどこに依頼するか検討する際は、外壁調査報告書の見本を見せてもらいましょう。外壁調査を行ったあと、調査会社は詳細な報告書を作成します。この報告書には、浮きや割れの程度や発生場所、その他の詳細な外壁の状態、具体的な調査方法などが記載されています。
どの程度詳細な報告書を作成するかは調査会社次第です。より詳細な情報を記載してくれるようなら、現在必要な補修作業の実施はもちろん、将来のメンテナンス計画に活用できる貴重な資料となるでしょう。
まとめ
外壁調査は、建物の外壁の損傷や劣化を調査するもので、建築基準法に基づき定期的に実施することが義務付けられています。調査を行うことで、外壁のはがれなどを早期に発見し、通行人への被害を未然に防ぐことができます。
マンションなどの共同住宅においては、都道府県や建築主事を置く市町村など、特定行政庁が定めた基準に適合する場合、調査を行う必要があります。
調査期間は、部分的な検査を6ヶ月から3年以内に一度行い、さらにタイルや石貼り、モルタルなどの外壁のついては全面的な打診調査を10年に一度実施します。
より精度の高い外壁調査を行うには、調査会社の選定が非常に重要です。実績が豊富で、調査方法の説明や報告書の作成を丁寧に行う会社を選べば、信頼性の高い調査結果を期待できます。
外壁調査は、マンションの安全性を維持し、運用リスクを最小限に抑えるために欠かせません。まだ外壁調査を実施していない物件がある場合は、早急に実施することをおすすめします。
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