火山ハザードマップを徹底解説! 富士山噴火リスクと不動産取引への対策は?
富士山は日本を代表する山ですが、活火山であり、美しい姿の裏には噴火による大規模な災害リスクが潜んでいます。
富士山ハザードマップは、国や研究機関、専門家などによる地質調査や研究などが進み、噴火シミュレーションの技術も大きく進歩したことなどから、2021年3月に改定、公表されました。
本記事では、リスクを避けるための火山ハザードマップの確認方法と、富士山の噴火による関東への影響、不動産取引で押さえるべき対策について解説します。
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火山ハザードマップとは?
火山ハザードマップは、火山噴火に伴う自然災害(噴石、火砕流、火山泥流、溶岩流、降灰、火山ガスなど)の影響範囲を視覚的に示した地図のことです。このマップを活用することで、住民や行政はリスクの高いエリアを把握し、避難計画を立てやすくなります。
火山ハザードマップに記載されているリスクは、各火山の特徴や噴火の規模によって異なります。例えば、富士山の場合は溶岩流や降灰が広範囲に及ぶ可能性があるため、それに合わせた防災計画が必要です。
特に、不動産取引においては、火山ハザードマップは物件の所在地がどの程度のリスクにさらされているかを判断する重要な情報源となります。
静岡県 統合基盤地理情報システム(GIS)より降灰可能性マップ
過去に発生した富士山噴火の発生状況
富士山は長い歴史の中で周期的に噴火を繰り返しており、そのたびに周辺地域に大きな被害をもたらしてきました。以下は、過去に発生した富士山噴火の主要な事例です。
噴火名 |
時期 |
概要 |
---|---|---|
小御岳火山 |
約70万年前~20万年前 |
現在の富士山の位置で小御岳火山が活動を開始し、愛鷹山とともに周辺の火山活動が活発化した。 |
古富士火山 |
約10万年前~ |
この時期の噴火では、大規模な溶岩流が発生し、富士山の形状に大きな変化をもたらした。 |
新富士火山 |
約5,000年前~ |
溶岩流や火砕流、火山灰など多様な噴火現象が発生し、8世紀以降は古文書にも記録が残されている。 |
宝永噴火 |
1707年 |
江戸市中でも多量の降灰があり、山麓の家屋や耕地に大きな被害を与え、噴火後も土砂災害が続いた。 |
(出典:富士市|富士山の噴火史について)
このような過去の噴火事例を見ても、今後の富士山噴火に対する備えが必要であるでしょう。
宝永噴火(1707年)時の実績降灰分布
どう見る? 火山ハザードマップの確認方法
火山ハザードマップは、火砕流や溶岩流、降灰など、発生し得る災害の範囲や影響を示し、リスクの高い地域を明確にしています。特に不動産取引においては、物件がどのリスクエリアに該当するかを把握することが欠かせません。
ここでは、火山灰ハザードマップの具体的な確認方法を解説します。
噴火リスクの範囲と種類を確認
火山ハザードマップでは、噴石や火砕流、溶岩流、降灰など、噴火時に発生するリスクの範囲が色分けによって示されています。そのため、どの地域がどのリスクにさらされているのかを一目で把握できるのです。
例えば、富士山の噴火による降灰リスクは広範囲に及ぶため、遠隔地であっても注意しなければなりません。こうした情報を基に、適切な防災計画を立てることが重要です。
災害ごとのリスク評価
火砕流や溶岩流、降灰など、噴火によって引き起こされる災害については、影響度合いをしっかり評価することが重要です。ハザードマップでは各災害ごとの影響範囲が示されているため、リスク評価に役立ちます。
例えば、溶岩流の影響を受けるエリアは建物の損壊リスクが高く、降灰が想定されるエリアでは交通機関や生活への影響が強く出ることが予測されるため、それぞれのリスクを考慮した対策が必要です。
最新情報の確認
ハザードマップは最新の火山活動データに基づいて定期的に更新されるため、常に最新の情報を確認することが不可欠です。
特に火山活動が活発化している状況下では、過去のデータだけでは不十分なため、信頼できる情報源から最新のマップを入手し、現状に即した防災計画を立てることが求められます。
最新情報を基に対策を続けることで、リスクを最小限に抑えることができます。
静岡県 統合基盤地理情報システム(GIS)より溶岩流等の流下ライン
火山噴火による関東への3つの影響~富士山噴火シナリオ
富士山噴火が関東に与える影響は大きく、主に交通機関・健康・経済の3つの面で多大な影響が発生すると予測されています。これらのリスクを理解し、事前の防災対策を徹底することが重要です。
降灰による交通機関への影響
富士山噴火による降灰は、交通機関に深刻な影響を与える可能性があります。
火山灰によって視界不良が起き、航空機や鉄道、自動車の運行に支障が生じます。航空機のエンジンが火山灰を吸い込むと故障の危険があり、鉄道においても火山灰がレール上に積もって導電不良が発生します。
また、道路上に火山灰が堆積すると自動車がスリップする危険が高まるほか、火山灰に含まれる鉱物粒子などによってフロントガラスが傷つくこともあるため、交通機関全般で厳重な注意が必要です。
健康や生活への長期的な影響
火山灰は、健康面にも深刻な影響を与えます。特に目や鼻、のど、気管支に異常をきたし、ぜん息や呼吸器疾患の悪化を引き起こす危険があります。
また、生活面では、火山灰の重さで電線が切れて停電が発生したり、雨を含んだ灰によって送電設備が故障して漏電が起こったりする可能性があります。さらに、水道施設に降灰すると浄水や配水が困難になり、給水が停止することも考えられるなど、日常生活にも大きな影響が及ぶことが予測されます。
経済への影響
経済面でも、火山灰による影響は甚大です。例えば、火山灰が商品に積もってしまうことや、コンピューターや精密機器の中に入り込んでしまい故障することがあります。交通機関のまひによって商品供給が滞り、商工業活動全般にも支障が生じるでしょう。
また、露地栽培の作物に火山灰や噴石が積もることで商品価値が低下することや、日照不足によって生育不良となる可能性もあります。さらに、火山灰の重みでビニールハウスが損壊するなど、農業への影響も深刻です。
降灰により、交通やライフライン、商工業、農林水産業などにさまざまな影響が発生することが考えられます
不動産取引で押さえるべき火山リスク対策2つのポイント
不動産取引では、火山噴火のリスクをしっかり把握し、適切な対策を講じることが重要です。火山ハザードマップの活用や、将来的な法改正を見据えた準備を行いましょう。
重要事項説明の義務化を見据えたチェックポイント
現在、重要事項として水害ハザードマップについての説明が義務化されていますが、火山ハザードマップの説明はまだ義務化されていません。
今後の法改正で火山ハザードマップの説明が義務化される可能性があるため、不動産会社はリスク管理の視点を持ち、どのように重要事項説明に対応するか、あらかじめ準備しておく必要があります。
このような準備によってリスクに備えた取引ができ、顧客からの信頼も向上します。
物件購入時に必須! 防災計画の提案とリスク管理のポイント
物件購入時には、顧客に対して防災計画を提案し、リスク管理の重要性を伝えることが不可欠です。火山噴火のリスクを軽視せず、具体的な対策を講じることで、顧客への信頼感が高まります。
例えば、火山灰の降灰リスクがある地域では、定期的なメンテナンスといった対策の提案が有効です。不動産会社がリスクに対応する姿勢を示すことで、顧客は安心して物件を購入でき、長期的な満足感を得られるでしょう。
日本国内には111の活火山があり、その中には、今後100年以内に噴火する可能性があるものもあります。近隣で影響のありそうな火山のハザードマップも含めて確認しておきましょう
(出典:気象庁 日本の活火山)
まとめ~火山ハザードマップを活用してリスクを最小限に抑える
火山ハザードマップは、噴火による被害を予測し、事前に備えるために欠かせません。不動産取引では、物件が火山噴火に対してどのようなリスクのある立地なのかを確認し、適切な対策を立てることが重要です。
富士山噴火のリスクに備えた対策を提案することで、顧客からの信頼も得られます。しっかりとリスク管理を行い、万が一の災害時にも顧客をサポートできる準備を進めましょう。
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