不動産のAM、PM、BM、FMとは? 役割と業務内容を分かりやすく解説
不動産業界では、AM(アセットマネジメント)、PM(プロパティマネジメント)、BM(ビルマネジメント)、FM(ファシリティマネジメント)という用語を耳にする機会が多くあります。
しかし、それぞれの違いや役割を正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。特に、PMとFMの2つは混同されやすい傾向にありますが、業務範囲や役割が異なります。
そこでこの記事では、これら4つの役割と業務内容を分かりやすく解説します。不動産管理業務の理解を深め、実務に役立てたい方はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.AM、PM、BM、FMの特徴を比較
- 2.AM(アセットマネジメント)は資産管理業務
- 2.1.AMの具体的な業務内容
- 3.PM(プロパティマネジメント)は不動産運営管理業務
- 3.1.PMの具体的な業務内容
- 3.1.1.・入居者募集、契約締結、クレーム対応、退去手続き
- 3.1.2.・賃料管理(家賃の請求・回収など)
- 3.1.3.・空室対策・維持管理計画の策定
- 4.BM(ビルマネジメント)は建物の管理業務
- 4.1.BMの具体的な業務内容
- 4.1.1.・設備管理
- 4.1.2.・清掃・警備
- 4.1.3.・耐震診断、消防設備点検、定期的な建築検査の実施
- 5.FM(ファシリティマネジメント)は建物運営とコスト最適化業務
- 5.1.FMの具体的な業務内容
- 5.1.1.・建物の最適運営(オフィスやワークスペース活用の最適化)
- 5.1.2.・コスト管理・削減(省エネタイプの設備導入などによるエネルギー管理)
- 5.1.3.・安全管理、防災対策
- 5.1.4.・オフィスのデジタル化、快適な労働環境の提供
- 6.まとめ
AM、PM、BM、FMの特徴を比較
下表は、4つの業務内容の役割、業務範囲の違いをまとめたものです。
タイプ |
役割 |
業務範囲 |
---|---|---|
AM |
資産価値の最大化と投資戦略立案 |
資産運用、物件選定・売却、収益改善策 |
PM |
収益確保と物件運営管理 |
入居者対応、契約管理、賃料回収、空室対策 |
BM |
建物維持管理と法令遵守 |
設備点検・修繕、清掃・警備、耐震診断、法定点検 |
FM |
運営最適化とコスト削減 |
エネルギー管理、効率化、スペース最適化 |
それぞれの業務がどのように連携し、不動産の価値向上や収益性に貢献しているのかを深く理解することが重要です。
AM(アセットマネジメント)は資産管理業務
AMは、資産管理業務のことで、オーナーや投資家に代わって不動産の資産価値を最大化する役割を持ちます。目的は長期的な収益向上であり、物件の運用計画や資産の見直しを通じて利益を最適化します。
AMの具体的な業務内容
AMとして行う具体的な業務は多岐にわたります。主な内容は以下の3つです。
・投資戦略の立案
AMの基本業務は、投資戦略を策定することです。市場や経済動向を調査・分析し、不動産の収益を最大化するための計画を立てます。たとえば、需要が高まるエリアに資産を移すことで、収益を向上させることが可能です。
・物件選定
新たに物件の購入を検討する際には、エリアの将来性やリスク要素を見極めて最適な物件を選定します。具体的には、再開発が決まったエリアや人口増加が予測される地域など、将来的に価値向上が期待できる物件を選ぶことがポイントです。
・物件売却
収益性が低下した資産や、市場価値がピークを迎えた物件は適切なタイミングで売却することが重要です。売却益を新たな投資に回すことで、保有不動産の収益率を維持または向上させます。
AMはこれらを通じて不動産資産の収益性を長期的に向上させ、安定した運用を実現する業務なのです。
AMは、アセットマネジメント(asset management)の略で、資産管理業務のことです。不動産の収益を最大化するために、物件の選定には市況やエリア動向などの情報分析が必要となります
PM(プロパティマネジメント)は不動産運営管理業務
PMは、不動産オーナーに代わって物件の運営管理を行う業務のことです。目的は収益の安定化と向上で、入居率の向上や資産価値の維持を目指します。特に、日常の運営業務全般を包括的に管理する点が特徴です。
PMの具体的な業務内容
PMとして行う業務は多岐にわたりますが、以下の3つが特に重要です。
・入居者募集、契約締結、クレーム対応、退去手続き
新しい入居者の募集、契約内容の調整、契約締結、入居後のトラブル対応、退去時の手続きを担当します。クレームには迅速かつ適切に対応することで入居者満足度を高め、長期的な契約継続につなげます。
・賃料管理(家賃の請求・回収など)
家賃の請求・回収は、物件の収益を安定させるための重要な業務です。支払いの遅延があった場合は督促業務を行うほか、支払い状況を管理して未回収リスクを低減します。さらに、定期的な賃料改定の提案も、収益を最大化するために欠かせません。
・空室対策・維持管理計画の策定
空室が続くと、オーナーの収益に直接的な影響が生じます。これを防ぐために、市場調査の結果に基づいた適切な家賃設定や、リノベーションによる物件の魅力向上策を提案します。同時に、建物の維持管理計画を立て、設備トラブルの予防や修繕費用の最適化を図ります。
PMはこれらを通じて物件運営を安定化させ、オーナーの収益を確保する業務なのです。
PMは、プロパティマネジメント(property management)の略で、物件の運営管理を行う賃貸管理やマンション管理業務のことです。建物の維持管理や入居者対応など幅広い業務を担います
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BM(ビルマネジメント)は建物の管理業務
BMは、建物の維持管理に関する業務を指します。目的は、物件の機能を長期にわたり保ち、安全で快適な利用環境を整えることにあります。設備の点検や修繕を通じて建物の価値を維持し、トラブルを未然に防ぐ役割を果たします。
BMの具体的な業務内容
BMとして行う業務は、主に以下の3つに分けられます。
・設備管理
BMの中心的な業務は、建物設備の維持管理です。空調や電気設備、給排水システムといったインフラの定期的な点検と修繕を行い、トラブルを未然に防ぎます。
・清掃・警備
建物内外の清掃業務や、セキュリティ対策もBMの大切な業務です。共用部分の清掃や害虫駆除を通じて、入居者が快適に過ごせる環境を整えます。警備業務としては、防犯カメラの設置・監視や巡回警備を実施し、施設内の安全を確保します。
・耐震診断、消防設備点検、定期的な建築検査の実施
法令に基づいた耐震診断や、消防設備の定期点検も重要な役割です。これらの業務は、建物の安全性を確保するために法律の規定通りに実施する必要があります。特に、建築基準法に準拠した定期的な建築検査は、入居者や利用者の安全を守るうえで欠かせません。
効率的かつ適切な管理によって物件の魅力を高めることができれば、結果としてオーナーの利益を最大化することが可能になります。
BMは、ビルマネジメント(building management)の略で、建物の総合的な維持管理業務を指します
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FM(ファシリティマネジメント)は建物運営とコスト最適化業務
FMは、建物の運営効率化とコスト最適化を目的とした管理業務です。企業やテナントの従業員が、快適かつ効率的に業務を行える環境を整える役割を担います。BMと似ていますが、維持管理に加え、運営効率の向上やコスト削減に重点を置く点が特徴です。
FMの具体的な業務内容
FMとは、建物全体の運営を最適化し、コストを削減するための以下の業務を指します。
・建物の最適運営(オフィスやワークスペース活用の最適化)
オフィスレイアウトの改善や共用スペースの有効活用を通じて、業務効率を向上させます。たとえば、リモートワークの導入に合わせてワークスペースを縮小することで、維持費を削減することも可能です。
・コスト管理・削減(省エネタイプの設備導入などによるエネルギー管理)
LED照明や高効率空調設備の導入により、エネルギー消費を抑えるだけでなく環境負荷も軽減します。これにより、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みにも貢献できます。
・安全管理、防災対策
安全性を確保するための防災計画の策定や避難訓練の実施もFMの業務範囲です。災害発生時に備え、事業を迅速に再開できるようBCP(事業継続計画)を策定し、事前に準備しておくことも重要な任務です。
・オフィスのデジタル化、快適な労働環境の提供
近年では、IoT(モノのインターネット)を活用したビル管理が進んでいます。たとえば、センサーを使った室温調整や稼働状況のモニタリングにより、快適な労働環境を提供すると同時にエネルギーの無駄を削減します。
FMはこれらを通じて、単なるコスト削減だけでなく、企業全体の生産性向上と環境改善を推進する業務なのです。
FMは、ファシリティマネジメント(Facility Management)の略で、建物の維持管理とコスト最適を目的とした運営効率の向上も業務に含まれます。災害時に備えBCP(事業継続計画)の作成なども業務に含まれます
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まとめ
不動産管理におけるAM、PM、BM、FMは、それぞれ異なる役割を持ちながらも、資産価値の維持と収益向上に向けて連携しています。
それぞれの役割を理解することで業務全体の流れが見え、より効果的な管理が可能になります。特に不動産業界に入ったばかりの方にとっては、各業務の違いと連携を深く理解することが将来的なスキルアップに直結するでしょう。
今後のキャリア形成に役立つ知識を身につけ、より良い成果を目指しましょう。
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