嫌悪施設を一覧で確認 | 調べ方や不動産会社が果たすべき告知義務を解説
「嫌悪施設」とは、周囲の人から敬遠されがちな施設のことです。騒音や臭いを発生させる施設や、心理的に嫌悪感を持たれる施設が該当します。
近隣に嫌悪施設がある場合、物件の売買価格や賃料などにも影響します。そのため不動産会社としては、具体的にどのような施設が嫌悪施設に該当するのかを把握し、また、取り扱っている物件の近隣に嫌悪施設があるかどうかを調査しなければなりません。
今回は、嫌悪施設を一覧で紹介し、調べ方や不動産会社が果たすべき告知義務などを解説します。
そもそも嫌悪施設とは何か
「嫌悪施設」とは、近隣に立地していることで、不動産価値の低下や生活環境への悪影響が懸念される施設です。
嫌悪施設の存在は、不動産が抱える瑕疵(かし)の中でも「環境的瑕疵」や「心理的瑕疵」に該当し、買主や借主の判断に重大な影響を及ぼします。不動産取引におけるトラブルを防ぐためにも、不動産会社は重要事項説明の際に、顧客に嫌悪施設の存在について告知しなければなりません。
重要事項の不告知や不実の告知をした場合、宅地建物取引業法違反と見なされ、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。また、契約不適合責任を追及されたり、損害賠償請求を受けたりする可能性もあり、社会的な信用を失いかねません。
さらに、営業停止処分や免許取消処分など、行政処分の対象となるリスクもあります。行政処分を受けると、経済的損失だけでなく、事業の存続自体が危ぶまれることになるため、注意が必要です。
「環境的瑕疵」や「心理的瑕疵」に該当する嫌悪施設は、重要事項説明の際に告知する必要があります(画像はイメージです)
嫌悪施設を一覧で確認
一般的に、嫌悪施設として認識されやすい施設を一覧で紹介します。
騒音や振動の発生 |
・高速道路 |
---|---|
悪臭の発生 |
・工場 |
安全上の懸念がある |
・ガスタンク |
風紀や治安上の懸念がある |
・パチンコ・スロット店 |
心理的に忌避されやすい |
・墓地 |
騒音や悪臭が発生すると、健康被害が出て生活に支障をきたす恐れがあります。また、風紀や治安の悪化をもたらす可能性がある施設の場合も「安心して住めない」という印象を持たれてしまうでしょう。
近隣にこれらの嫌悪施設があると、買主や借主が見つかりづらくなり、一般的に需要が減ります。そのため、価格や賃料の下落につながるのです。
周辺に嫌悪施設がある場合、音や臭気、煙などは施設との距離によっても影響が異なります。影響度合いについては現地調査などで確認するのがよいでしょう(画像はイメージです)
宅地建物取引業法による嫌悪施設の告知義務
宅地建物取引業法47条1項1号では、不動産会社に対して「相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなる」情報について、「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁止しています。
仲介している物件や管理物件の近くに嫌悪施設がある場合、重要事項説明書に記載したうえで、口頭でも説明します。具体的には、近隣に嫌悪施設が存在している旨や、どのような影響が想定されるかを買主・借主に対して告知しなければなりません。
なお、不動産会社に求められる「告知義務」を果たすべきタイミングは、売買契約などの締結前です。ただし、契約の締結後、決済・引渡し前に嫌悪施設の存在や新設が予定されている事実を知った場合、決済・引渡しまでに追加説明を行う必要があります。
なお、嫌悪施設が存在する事実を知らなかった場合は、告知をしなくても告知義務違反には該当しません。
とはいえ、さまざまな事情を鑑みて、不動産会社が嫌悪施設の存在を「知り得たはず」と判断される状況下では、事実を知らなかった場合でも法的責任を問われる可能性があります。
踏切や線路の至近にある物件の場合、音や振動、洗濯物が干しにくいなどの影響が考えられるでしょう(画像はイメージです)
嫌悪施設の調べ方
不動産会社には嫌悪施設に関する告知義務がありますが、「物件からどのくらい離れていれば説明不要か」「どの程度の影響度合いであれば説明不要か」という具体的な基準はありません。
そこで、買主や借主が十分な情報に基づいた意思決定を行えるよう支援するためにも、不動産会社は以下の調査を実施すべきです。
・行政機関への照会
・施設の確認
・物件周辺の現地調査
・地図・都市計画図の確認
・ハザードマップの確認
・売主や近隣住民からのヒアリング
一連の調査を通じて、生活への影響度合いを予測し、説明の要否を判断する必要があります。要否の判断に迷う場合、買主や借主の判断に影響を与えると考えられるのであれば、説明したほうがよいでしょう。
後日トラブルに発展する事態を防ぐためにも、「不動産会社として、調査すべきことは綿密に調査した」と主張できるように備えましょう。
告知義務の債務不履行とならないよう、嫌悪施設の可能性がある施設がないか周辺の現地調査などを実施するとよいでしょう
嫌悪施設に該当するかは人それぞれ異なる
買主や借主の判断に重要な影響を与える可能性がある場合、不動産会社は嫌悪施設について告知義務を負います。
しかし、何が嫌悪施設に該当するかという明確な定義はなく、そもそも嫌悪を感じるかどうかも人によって異なります。また、時代背景や技術の進歩によって嫌悪感が薄れることもあるため、一様ではありません。
たとえば、幹線道路の近くで人通りが多ければ、「安心して生活できる」と感じる方もいるでしょう。また、高齢者や小さい子どもと住んでいる方の場合、近くに病院があると好都合と判断する可能性もあります。
このように、捉え方によってはプラスの要素にもなり得る嫌悪施設ですが、だからといって告知義務が免除されるわけではありません。
単なる嫌悪施設ではなく、「プラスにもマイナスにも捉えられる」という場合でも、買主や借主が自らの価値観や生活スタイルに応じた判断を行えるように、客観的な事実として説明しましょう。
嫌悪施設には明確な定義がなく、またガイドラインも存在しません。買主や借主が自らの価値観や生活スタイルに応じて住まい選びができるよう、説明が出来るようにしておきたいものです(画像はイメージです)
まとめ
嫌悪施設の捉え方は、個人の生活スタイルや価値観によって異なります。とはいえ、取り扱っている物件の近隣に嫌悪施設がある場合、不動産会社はその旨を告知しなければなりません。
騒音・悪臭を発生させる施設や何らかの危険を伴う施設、心理的に忌避されやすい施設が、一般的に嫌悪施設に含まれます。行政機関への照会や現地調査、公的資料などを確認し、買主や借主に説明すべきかどうかを検討しましょう。
告知義務を怠ると、宅地建物取引業法に違反したと見なされてしまいます。この場合、営業停止処分や免許取消処分などの行政処分、契約解除や損害賠償請求などの民事上の責任を問われる可能性もあるため、注意しましょう。
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