繁忙期後の空室対策で差をつける! 見直すべき3つの原因と4つの改善策
繁忙期後の空室対策に頭を悩ませている賃貸管理会社の方は少なくないはずです。
たとえば、春の時点で入居が決まらなかった物件が「夏を迎えても空室状態のまま」という状況は珍しくありません。対策が後手に回れば、次の繁忙期まで入居のチャンスを得られないおそれもあります。
そこでこの記事では、繁忙期後も空室が埋まらない原因を整理し、すぐにできる空室対策を詳しく解説します。反響を増やし、成約につなげたいと考えている管理会社の方は、ぜひ参考にしてください。
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繁忙期後に空室が埋まらない3つの主な原因
春の繁忙期を過ぎても空室が残ってしまう背景には、いくつかの共通した原因があります。ここでは、特に見落とされがちな3つの原因について解説します。
1.賃料が周辺相場より高くなっている
築年数の経過によって資産価値が下がった物件は、賃料を据え置きのままにしていると、周辺相場と比較して割高に感じられ、敬遠されやすくなります。
近年では、物件検索サイトで条件や賃料を簡単に比較できるため、同じような条件であれば、入居希望者はより割安な物件を選ぶ傾向が強まっています。さらに、新しい商業施設の開業や再開発によって街並みが整備されて人の流れが変わると、地域の賃貸ニーズも変化します。
こうした状況においては、賃料が実情に合っているかを見直す必要があります。物件の魅力や状況だけでなく、エリア全体の動向を踏まえた柔軟な賃料設定が重要です。
2.設備や内装の古さがマイナスになっている
競合物件が多い地域では、設備や内装の印象が入居希望の有無を大きく左右します。なかでも、設備や間取りの仕様が古いままでは現代のライフスタイルに合わず、敬遠されやすいでしょう。
たとえば、次のような仕様が挙げられます。
・和室が中心の間取り
・3点ユニットバス(浴室・洗面・トイレ一体型)
・エアコンが設置されていない
さらに、共用部の古さも物件全体の印象に影響します。また、防犯カメラやオートロックが設置されていない物件はセキュリティ面で不安を持たれやすいでしょう。
そのため、物件全体の価値を高めるためには、室内のリフォームに加え、共用部の見た目や機能性も含めて改善を図ることが重要です。
3.入居者ニーズの変化に対応できていない
物件に明確な欠点がなくても、周辺環境の変化によって賃貸ニーズが低下し、空室が埋まりにくくなることがあります。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
・近隣のスーパーの閉店
・大学のキャンパス移転や廃止
・再開発に伴う人の流れの変化
これらの要因により、地域全体の生活利便性や居住需要が下がると、同じ条件のままでは入居者に選ばれにくいでしょう。さらに近年では、入居者が求める設備にも変化が見られます。
代表的な例として、以下のような設備が重視される傾向にあります。
・インターネット無料
・高速Wi-Fi
・宅配ボックス
近年は「インターネット無料」や「宅配ボックス設置」などの物件も増えているため、それらがない物件だと、設備面でも不利になることが少なくありません。
これからも選ばれる物件であるためには、時代の流れに目を向け、設備を柔軟に見直していく姿勢が求められます。
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繁忙期後の空室対策で押さえるべき2つの基本
ここでは、繁忙期後の空室対策で押さえるべき2つの基本ポイントを解説します。
1.データ分析を行う
空室対策を進めるうえで大切なのは、思いつきではなく、実際のデータを基に考えることです。なかでも入居者のニーズを把握することは、最初の一歩といえるでしょう。
たとえば、総務省の統計データ・不動産ポータルサイトの情報・地域密着の不動産会社へのヒアリング・現地調査などを組み合わせることで、次のような項目を多角的に把握できます。
・人口動態
・世帯構成
・エリアごとの家賃相場
・成約までの平均日数
調査によって得た複数の情報を組み合わせて分析することで、入居希望者のニーズに沿った具体的な改善策を導き出すことが可能です。
2.オーナーと方針を共有し、早めに対策を講じる
空室を解消するためには、管理会社だけで判断するのではなく、オーナーとの連携が欠かせません。特に賃料の見直しなど、資産価値に関わる提案は伝え方によって印象が大きく変わります。
たとえば、「相場より高い」と一方的に伝えるのではなく、地域の賃料相場や反響数の推移といった具体的なデータを中立な判断材料として提示することが重要です。また、空室期間が長引く前に方向性をすり合わせておくことで、修繕や条件変更などの柔軟な対応もしやすくなります。
管理会社として信頼を得るには、提案の背景や意図を丁寧に伝え、オーナーと方向性を共有しながら対策を進めていくことが大切です。
≫ 賃料査定の方法とは? 査定の種類と具体的な賃料算出の方法を解説
賃料設定が高すぎると長期の空室リスクが高まるため、空室期間や周辺の状況、データなどをよく分析して賃料を検討する必要があります
すぐできる繁忙期後の空室対策4選
繁忙期での入居を逃した物件でも、工事の実施や多額の予算なしに改善できるポイントは意外と多くあります。ここでは、現場ですぐに実践できる4つの具体的な対策を解説します。
1.フリーレントや賃料見直しで反響を増やす
費用をかけずに空室を改善したい場合は、以下のような条件の見直しが効果的です。
・敷金・礼金ゼロ
・フリーレント期間の導入
・賃料を周辺相場に合わせて調整
入居者が負担に感じやすいのは、契約時に必要な初期費用です。そこで敷金・礼金をゼロにしたり、フリーレント期間を設けたりすることで、「お得感」を打ち出しやすくなります。特に、現在の住まいと新居の賃料の二重支払いを避けたい層には強く響く条件です。これらの条件はポータルサイトの検索項目に含まれていることも多いため、反響数の増加にもつながります。
また、賃料が周辺相場と乖離している場合は、金額自体の見直しも検討しましょう。
参考:『敷金・礼金』の動向をLIFULL HOME'Sが調査【首都圏版】
『敷金・礼金』の動向をLIFULL HOME'Sが調査【近畿圏版】
2.室内写真やキャッチコピーを見直す
物件の第一印象は、ポータルサイトに掲載される写真と文章でほぼ決まります。反響が少ない場合は、次のような点を確認・修正する必要があるでしょう。
・掲載情報が古くなっていないか
・写真が暗すぎないか
・部屋の広さが伝わりにくい構図になっていないか
・物件の魅力が伝わる文章になっているか
たとえば、日中の自然光が差し込む時間帯に撮影された写真は、室内をより明るく広く見せる効果があります。また、「駅近」「Wi-Fi無料」などのヒットしやすいキーワードを盛り込んだキャッチコピーを添えることで、検索結果に表示されやすくなります。
1枚の写真やキャッチコピーの一言で反響が大きく変わることもあるため、掲載内容の定期的な見直しはシンプルながら効果的な対策といえるでしょう。
≫ 不動産集客の要!物件写真が必須な場所と上手に撮影する6つのコツ
≫ 物件写真で集客力アップ! 他社と差がつく3つの撮影テクニックとポイント
3.集合ポストや玄関まわりの印象を整える
共用部分の印象は、内見後の成約率に大きく影響します。特に、集合ポストや玄関まわりが古びていたり、劣化が目立っていたりすると、建物全体の評価を下げてしまうため注意が必要です。
集合ポストをデザイン性のあるものに交換するだけでも、エントランスの印象は大きく変わります。近年では、次のような利便性の高い製品も多く、入居者満足度の向上にもつながります。
・インターネット通販で使用されるメール便対応サイズのポスト
・宅配ボックスと一体化したタイプ
さらに、照明の交換や定期的な清掃などの手入れを行うことで、清潔で明るい印象を与えながら防犯面でも安心できる共用部に整えられます。こうした視覚的な改善は、周辺の競合物件との差別化にもつながるでしょう。
4.家具・家電を設置し、“すぐ住める物件”としてアピールする
家具・家電付きの物件は、引越しの費用や準備の負担を軽減できるため、学生や単身者から高い支持を集めています。特に、以下のような基本的な設備がそろっていると、「すぐに生活を始められる」という安心感を与えられるでしょう。
・テレビ
・冷蔵庫
・洗濯機
・電子レンジ
・ベッド
・机
ポータルサイトでは「家具・家電付き」に条件を絞って検索する利用者も多く、こうしたニーズに合致することで反響を得やすくなります。また、転勤や一時的な住まいを探している人など、短期間の入居を希望する層にも選ばれやすくなるため、幅広い入居希望者が期待できるでしょう。
LIFULL HOME'S『できれば検索』における「住まい探しの絶対条件」ランキング2023では、「家具・家電付き」は地方でニーズがより強まる傾向にありました
参考:LIFULL HOME'S『できれば検索』における「住まい探しの絶対条件」ランキング2023「オートロック」「追焚機能」「南向き」が全国的に急上昇
まとめ
繁忙期を過ぎても空室が埋まらない原因は、物件の状態だけでなく、周辺環境の変化や入居者ニーズとのズレにあることも少なくありません。データを基に早めに現状を見直し、オーナーと方針を共有したうえで具体的な対策を講じることが重要です。
見せ方や条件の改善といった小さな工夫でも、入居希望者の目に留まる物件へと変えていくことは十分可能です。今できることから着実に取り組むことで、空室の早期解消につながります。
繁忙期に頼りきらず、年間を通して成果を出せる管理を目指していきましょう。
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