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退去時のクリーニング費用は借主・貸主のどちらが負担?国土交通省のガイドラインを解説

退去時のクリーニング費用は借主・貸主のどちらが負担?国土交通省のガイドラインを解説

「独立行政法人国民生活センター」の消費生活相談データベースによれば、賃貸住宅に関する相談件数は年間で3~4万件程度寄せられていることが明らかにされています。そして、そのうちの約3割にあたる1万~1.5万件が「敷金ならびに原状回復トラブル」です。

賃貸物件を運営・管理するうえでは、退去時の原状回復について正しく理解しておくことが重要なリスクマネジメントにつながります。今回は「退去時のクリーニング費用」について、国土交通省のガイドラインをもとに基本的な考え方や注意点を解説します。

 ≫ 原状回復費用のルールと借主負担になるケース・ならないケース

目次[非表示]

  1. 1.国土交通省のガイドラインでは貸主負担
  2. 2.東京都の賃貸住宅トラブル防止ガイドラインもチェック
  3. 3.借主がクリーニング費用を負担するケース
    1. 3.1.善管注意義務を怠っている場合
    2. 3.2.特約が設けられている場合
  4. 4.特約を定めていないときの注意点
  5. 5.クリーニングの実施内容と費用の目安

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国土交通省のガイドラインでは貸主負担

賃貸物件の退去時における原状回復は、借主と貸主の間で利害の不一致が起こりやすいことから、さまざまなトラブルの原因となってきました。そこで、国土交通省が原状回復に関する基本的なルールのあり方として明確化したものが「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。

ガイドラインにはさまざまなケースや箇所に関する具体的な考え方が記載されており、そのなかでクリーニング費用についても言及されています。それによると、借主が通常考えられる範囲で部屋を使用していた場合であれば、クリーニング費用は貸主負担になるとされています。

しかし、実際には借主が支払った敷金から差し引かれる形になっていたり、入居時あるいは退去時に清掃費などの名目で負担したりするケースがほとんどです。これは、賃貸借契約書に「クリーニング費用は借主負担」という特約を設けることが認められているためです。

特約の詳しい仕組みについては、後ほど詳しくご紹介します。

東京都の賃貸住宅トラブル防止ガイドラインもチェック

東京都は特に人口の流動性が高いことから、賃貸住宅の入退去に関するトラブルが起こりやすい側面があります。そこで東京都は「賃貸住宅紛争防止条例」を制定し、宅地建物取引業者が契約者への重要事項説明を行う際に、原状回復に関する情報が記載された書面を交付したうえで説明することを義務付けています。

そして、条例の施行に合わせて作成されたのが「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」です。これは賃貸借契約や退去時の敷金精算、クリーニング費用に関するルールを明文化し、トラブル防止に役立てることを目的としたものです。

法的な拘束力はないものの、費用負担の考え方や事例などの基準がまとめられており、国土交通省のガイドラインをより分かりやすく理解するための内容になっているので、こちらも目を通しておくことが大切です。

なお、「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」においても、入居者向けの案内として、「明け渡し時に不用品や粗大ごみを置いておくとクリーニング費用が敷金から差し引かれる可能性がある」「専門のクリーニングが必要な場合はその費用を請求されることがある」と示されています。

借主がクリーニング費用を負担するケース

冒頭でも触れたように、ガイドラインでは原則として貸主がクリーニング費用を負担するものとされていますが、実際には借主が費用を負担するケースもあります。ここでは、借主負担となる2つのパターンについて解説します。

善管注意義務を怠っている場合

賃貸物件の借主には「善管注意義務」があります。善管注意義務とは「善良なる管理者の注意義務」の略語であり、社会通念上要求される程度の注意義務のことです。

賃貸物件においては一般的に通常の範囲とされる管理・清掃を行い、雨漏りなどがあれば放置せず速やかに相談するといったことが該当します。また、原状回復のガイドラインでは、通常の清掃について「ゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水回り、換気扇、レンジ回りの油汚れの除去等」と記載されています。

借主がこれらの義務を果たしておらず、それによって著しい汚損や破損が生じていた場合、クリーニング費用は借主の負担になると考えるのが自然です。

特約が設けられている場合

ガイドラインはあくまでも原状回復などに関する原則を示したものであり、そのまま法的な拘束力を持つわけではありません。そのため、その他の法律や秩序などに反しない限り、特約を設けることも自由とされています。

たとえば契約書に「ハウスクリーニング代は借主負担とする」という旨を定めれば、借主の負担とすることも可能です。ただし、ガイドラインでは、借主に不利な特約を設ける際には、以下の3つの用件を満たす必要があるとされています。

原状回復について借主に不利な内容の特約を設ける場合の用件

 1.特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
 2.賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
 3.賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

(引用:東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」)

つまり、客観的に見て十分な妥当性があるとともに、借主も特約の内容を理解しており、負担に同意していることが条件となります。

特約を定めていないときの注意点

賃貸借契約書に特約を定めず、クリーニング費用を借主負担としていない場合は、敷金でまかなうことになります。ただし、前述のように借主が費用負担をするのは「借主が善管注意義務を怠っていたことによる汚損や破損」に限定されます。

ガイドラインにも、以下のようなケースは「通常の住まい方・使い方をしていても発生すると考えられるもの」と区分されており、通常の賃料などで当然にカバーすべきであることから、借主に請求はできないとされています。

借主に費用負担を請求できないケース

  • フローリングのワックスがけ
  • 畳の裏返し、表替え
  • 家電後部壁面の電気焼け
  • クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
  • 全体のハウスクリーニング(借主が通常の清掃を行っている場合)
  • エアコンの内部洗浄(喫煙等によるにおいの付着を除く)
  • 水回りの消毒 など


この場合は敷金からもハウスクリーニング費用を差し引くことはできないため、注意が必要となります。

クリーニングの実施内容と費用の目安

クリーニング特約を定める場合でも、当然ながら明らかに度を超えた費用を請求することはできません。たとえば敷金などを設けない代わりに、入居時に清掃費を前払いしてもらうケースなどでは、あらかじめ妥当な金額を設定しておく必要があります。

ハウスクリーニングの費用は、「1平米あたり1,000円程度」が相場となっています。そのため、20平米前後のワンルームであれば、およそ2万円と見積もっておくとよいでしょう。

(参照:LIFULL HOME'S「賃貸の退去費用で損をしない!今からできる退去費用を抑えるコツとは」)

ただし、クリーニング内容によっても費用は異なるので注意が必要です。一般的なハウスクリーニングでは、水回り設備や床、壁、エアコンなどが対象の作業範囲となります。

壁紙の張り替えやフローリングの張り替えなどを加える場合は、さらに追加費用がかかるため、事前にいくつかの会社に見積もりを依頼してみるとよいでしょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:賃貸物件のクリーニング費用は誰の負担?
A:
国土交通省のガイドラインによれば、クリーニング費用は原則として貸主の負担とされています。しかし特約を設けることは認められており、実際には特約によって借主負担となるケースが多いです。

Q:特約を設けていない場合のクリーニング費用はどうなる?
A:
特約を設けていない場合、原則として借主にクリーニング費用を請求することはできません。ただし、借主が善管注意義務を怠っていた場合や借主の故意・過失によって汚損が生じている場合は、後から請求することも可能です。

Q:クリーニング特約を設ける際の注意点は?
A:
借主にとって不利な特約を設ける際には、「客観的に見て十分な合理性があること」や「借主が特約の内容を理解していること」「借主が負担に合意していること」の3つの要件を満たす必要があるとされています。そのため契約書に明示し、誤解や行き違いのないように努めることが大切です。 ​​​​​​​

  原状回復費用のルールと借主負担になるケース・ならないケース | LIFULL HOME’S Business 仲介・管理 賃貸借契約において、トラブルの原因となりやすい「原状回復」に関するポイントです。この記事では、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をもとに、特に押さえておきたいポイントとして、原状回復の定義や費用負担に関するルールを解説します。 LIFULL HOME'S Business 仲介・管理


Business 編集部
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