エアコンが故障した場合の対応はどうする? 賃料減額の考え方と事例
夏になると、入居者から「エアコンが故障したからすぐに対応してほしい」という連絡が多くなります。エアコンが故障した場合の賃料の減額については参考としてガイドラインが設けられているため、事前に把握しておきましょう。
本記事では、エアコンが故障した場合の賃料減額などの対応と修理費用の負担先について解説します。
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エアコンが故障した場合は賃料減額などの対応が必要
2020年に民法が改正(改正民法第611条)、賃借物の一部使用不能の賃料の減額などが明記されたことにより、エアコンが故障した場合は、賃料の減額などの対応が必要となりました。ここでは、賃料減額のガイドラインと、減額の割合や事例について説明します。
貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドラインとは
改正後の民法でも、賃料をどの程度減額するかについての明確な基準は定められていません。そこで、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が減額割合の目安となる「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を作成しました。
貸室・設備に不具合が発生した場合、下表を目安とし、状況に応じた減額が必要となります。
群 |
状況 |
賃料減額割合 |
免責日数 |
---|---|---|---|
A |
電気が使えない |
40% |
2日 |
ガスが使えない |
10% |
3日 |
|
水が使えない |
30% |
2日 |
|
B |
トイレが使えない |
20% |
1日 |
風呂が使えない |
10% |
3日 |
|
エアコンが作動しない |
5,000円(1ヶ月あたり) |
3日 |
|
テレビ等通信施設が使えない |
10% |
3日 |
|
雨漏りによる利用制限 |
5%~50% |
7日 |
(出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」)
たとえば、家賃(月額賃料)12万円の物件の電気が4日間使えない状態となった場合、以下の計算式で算出した金額を減額します。
月額賃料12万円×賃料減額割合40%×(4日-免責日数2日)/月30日 =3,200円の賃料減額
民法上、減額する金額は「割合に応じて」としか定めていないため、最終的な金額は当事者で話し合って決めます。とはいえ、貸室・設備に不具合が発生した場合、ガイドラインに則って金額を決めることが一般的です。
エアコンが故障した場合は「最大1ヶ月5,000円」の減額が目安
エアコンが故障した場合は、免責日数を3日とし、1ヶ月あたり5,000円の減額と記載されています。4日目以降、故障が直るまでは1ヶ月5,000円減額する(月30日の日割計算)ということです。貸主や入居者が必ずガイドラインに従わなければいけないわけではなく、実際には当事者同士の話し合いで金額を決めますが、過去の裁判例から大きく乖離しているわけではないため、目安の金額として認識しておきましょう。
相談対応事例集に見るエアコン故障時の態様
国土交通省は民法改正を受け、管理会社向けにアンケートを実施しました。※(「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集 ~賃借物の一部使用不能による賃料の減額等について~」平成30年3月)
アンケート結果によれば、賃借物の一部使用不能により、トラブルの原因となった内容は、「風呂が使えない」が最も多く56.2%、次に「上階からの漏水」が53.8%、「エアコンが作動しない」が53.1%と続きます。エアコンが作動しないトラブルは比較的多く発生していることが分かります。
※ 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会のモニター登録業者及び公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の会員管理業者を対象に郵送による調査を実施(平成 28 年9月9日~平成 28 年9月 30 日 配布件数 2,064 件回収件数 889 件(無効 12 件を含む)有効回収率 42.5%)。
国土交通省の資料では、アンケート結果から一部、対応事例が紹介されています。対応事例から、「エアコンが作動しない事例」をご紹介します。あくまで一事例ではありますが、お詫び金や賃料の減額など、入居者と相談の上対応がなされているようです。
(出典:国土交通省 「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集 ~賃借物の一部使用不能による賃料の減額等について~」平成30年3月 )
紹介事例はあくまでもアンケート調査の結果であり、さまざまな事情を考慮して当事者で円満に解決された事例を参考として紹介されているものです。賃料減額などの基準を決定するものではないことにご注意ください。
故障したエアコンの修理負担
そもそもエアコンが故障した場合、大家と入居者のどちらが修理費用を負担するのでしょうか。ここではケース別のエアコンの修理費用の負担先について紹介します。
大家が設置した場合は「大家負担」
大家が設置したエアコンが故障した場合、修理費用は大家負担となります。賃貸住宅に設置されているエアコンは、大家が設置しているケースが多いです。実際に、賃貸借契約書や重要事項説明書に、物件の設備としてエアコン付きと明記されていることが多く、法律上の修理費用の負担先は大家になります。
一方、エアコンが賃貸借契約の目的物でなければ、大家が修理する必要はありません。つまり、賃貸借契約書に物件の設備としてエアコンが明記されているかによって、修理費用の負担先が異なるのです。
エアコンが前入居者の残置物の場合は原則「借主負担」
前入居者が設置したエアコンをそのまま残していた残置物の場合、修理費用は原則、借主負担となります。残置物であるエアコンは、新たな借主の責任となることを契約時に説明され、賃貸借契約書を締結します。契約書の内容によっては、残置物の場合でも、大家側の責任になることもありますのでしっかりと目を通すことが大切です。
後々トラブルにならないように、残置物か、大家が設置したエアコンなのかを契約時にしっかり説明しておきましょう。
入居者が故意や不注意で壊した場合は「入居者負担」
入居者が故意や不注意で壊した場合の修理費用は入居者負担となります。たとえば、子どもが投げた物が当たってエアコンを破損した場合や、掃除を行おうとして故障させてしまった場合などが挙げられます。また入居者が購入して設置したエアコンに関しても、入居者の負担で修理することになるため覚えておきましょう。一方、自然災害など、大家と入居者の双方に責任がない場合は、修理費用の負担先は大家となります。
なお、特約などによって別途記載がある場合は、この限りではありません。
夏前にエアコンの試運転を依頼しよう
エアコンの故障を避けるためには、入居者に試運転を行ってもらうことが大切です。エアコンの修理費用の負担先はケースごとに法律で定められているものの、故障の原因や状況について同意を得られずトラブルになる可能性も高いでしょう。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、夏前にエアコンの試運転を依頼することが大切です。ここでは、エアコンの試運転の必要性と方法について紹介します。
なぜエアコンの試運転が必要なのか
エアコンの試運転を行うことで、故障や誤作動といったトラブルを早期発見することができます。夏になると、エアコンの故障や、新規購入者の住宅への設置依頼が増え、手配に時間がかかることが想定されます。
そこで、事前に試運転を使っておけば、故障や誤作動をいち早く見つけられるため、夏前に対処できるメリットがあるのです。エアコンの試運転は、おおよそ1ヶ月前には行っていた方がよいため、6月ごろには試運転を行うよう依頼しておきましょう。
エアコンの試運転の方法
エアコンを試運転する際は、事前に以下の箇所の清掃が必要です。
●コンセント回り
●フィルター
●室外機
これらの箇所にほこりやゴミがたまっているとショートによる火災の危険があります。清掃が完了したあとは、以下の手順で試運転を行います。
1. 夏前は冷房モード、冬前は暖房モードにして試運転開始 2. 吹き出し口から風が出ているかとエラーランプが点滅していないかを確認 3. 水漏れがないかを確認 4. 異音や異臭のチェック |
一つずつ紹介します。
1. 冷房モードにして試運転開始
16℃〜18℃に設定し、10〜15分ほど試運転を行います。冬前は暖房30℃で運転しましょう。風が出ていない場合は異常があると考えられます。
2. エラーランプを確認
エアコンの本体のエラーランプが点滅している場合は、何らかの不具合が出ている可能性が高いです。取扱説明書を確認し、エラー内容と照らし合わせてみましょう。
3. 水漏れがないかを確認
エアコン内部の水が排水ホースを通って室外機から出ているのかをチェックします。水が出ていないとホース内にゴミがたまっている可能性があり、そのまま使用を続けると故障の原因になります。
4. 異音や異臭のチェック
最後に、異音や異臭がないかをチェックしましょう。異音や異臭が発生する要因としては、エアフィルターや内部の熱交換器に汚れがたまっていることが挙げられます。
国土交通省のアンケート調査でもエアコンの故障は発生割合の高いトラブルであり、例年多くの故障対応が発生していることがわかります。設備や住宅が一部不使用となった際は、状況確認の上、必要な対応を行うことが求められます。また賃料減額などについては貸主と借主の双方が協議、決定する必要がありますので、ガイドラインや国土交通省の資料を参考にするとよいでしょう。
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