賃貸借契約の極度額とは? 金額の決め方や連帯保証人への伝え方などを解説
賃貸借契約における極度額は、連帯保証人(以下、「保証人」)の保護を目的に、契約時に定めることが義務化されています。しかし、なぜ極度額を決める必要があるのか、その金額をどのように設定したのかをしっかり説明できなければ、保証人に同意してもらえない恐れがあります。
本記事では極度額の意味や金額の決め方、保証人に同意してもらいやすい伝え方などを解説します。さらに、過去の賃貸借契約の更新時における極度額の扱いについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.賃貸借契約における極度額とは
- 2.極度額の決め方
- 2.1.具体的な極度額の目安
- 2.2.同意してもらいやすい伝え方
- 2.3.保証人に説明しておくべきこと
- 3.極度額の記載方法
- 3.1.極度額の記載箇所
- 4.極度額に関するQ&A
- 4.1.極度額のない既存契約について
- 4.2.契約更新時の極度額について
- 4.3.極度額が合意されない場合
- 5.賃貸借契約における極度額についてのまとめ
賃貸借契約における極度額とは
賃貸借契約における極度額とは、借主が家賃や更新料、建物の修繕費などを支払わない場合に、保証人が代わりに支払う金額の上限です。2020年4月1日の民法改正により、賃貸借契約に伴い締結する保証契約において、極度額を定めることが義務化されました。
多額の未払い家賃などが発生し、保証人に対して契約時には想定しなかった負担が生じないようにする目的があります。また、保証人にあらかじめ支払い額の上限を伝えておくことで、実際の請求時のスムーズな支払いも期待できます。
(出典:法務省2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります)
極度額の決め方
極度額をいくらとするかは、不動産会社が貸主と相談したうえで、保証人に伝え同意を得て決定します。ここでは金額の目安と、保証人に同意してもらいやすくなる伝え方を解説します。
具体的な極度額の目安
実際の不動産業務では、一般的な契約期間に合わせ、極度額を家賃1〜2年分に設定しているケースがよく見られます。これは多くの不動産会社が、家賃滞納期間を1年以上と想定しているからかもしれません。
極度額が低いと、滞納した家賃や建物の修繕費が高額になった場合に損失が発生する恐れがあります。できるだけ損失が出ないように極度額を設定することは、貸主の収益を守るうえで非常に大切です。
同意してもらいやすい伝え方
しかし、仮に2年分の家賃とした場合、月額10万円の物件なら計240万円です。保証人にいきなりその額を提示した場合、難色を示される恐れもあるでしょう。極度額に円滑に同意してもらうには、その金額を設定した理由をきちんと伝える必要があります。
そこで活用したいのが、国土交通省が極度額設定用の参考資料として公表している「極度額に関する参考資料」です。この資料は、家賃債務保証業者が借主に請求したものの回収できなかった損害額を調べたものです。
たとえば、家賃が8万円から12万円の物件では、損害の最高額は418.6万円にものぼります。こうした事実を示し、損害が高額になった場合を想定して極度額を決めたことを保証人に伝えてみましょう。家賃2年分の金額をいきなり伝えるよりも同意してもらいやすいのではないでしょうか。
保証人に説明しておくべきこと
保証人のなかには、金額の高さや保証という言葉から、極度額に対してスムーズな同意が難しい人もいるかもしれません。そこで、極度額は保証人が高額な債務を負わないようにする保証人保護を目的とした制度であること、あくまで支払い額の上限であり、算出した損害額のほうが低ければそちらが請求されることをしっかり説明しましょう。
また保証人が責任を負う範囲も明確に伝えておくことをおすすめします。未払いの家賃や更新料、借主が負うべき修繕費、契約解除から部屋を明け渡すまでの家賃相当の損害金などが保証人の負担となります。説明が不十分だと、請求の際にトラブルになる恐れがあるため、注意してください
極度額の記載方法
合意した極度額は、賃貸借契約書や保証契約書などの書面に記載しておく必要があります。記載方法に法的な規定はありませんが、たとえば「◯◯円(契約時の月額家賃の◯ヶ月相当分)」「契約時の月額家賃(◯円)の◯ヶ月分」などと記しておくとよいでしょう。
極度額の記載箇所
国土交通省が作成した賃貸住宅標準契約書(保証人型)では、「(6)連帯保証人及び極度額」「連帯保証人記名押印欄」の2ヶ所に極度額を記載します。この契約書を使う場合は漏れなく記入するようにしましょう。また、独自の契約書を使う場合は、標準契約書を参考に記載箇所を設けるようにします。
極度額に関するQ&A
国土交通省は、民法改正に伴って改定した賃貸住宅標準契約書に関するQ&Aを公開しています。ここでは、その中から極度額についてのQ&Aを3つピックアップして紹介します。
極度額のない既存契約について
Q:すでに締結している極度額の定めがない賃貸借契約は無効になるのか?
A:改正民法の施行前に締結された賃貸借契約は、改正後に初めて合意更新されるまで有効です。したがって賃貸借契約に基づく保証契約も、改正後に初めて合意更新されるまで極度額の定めがなくても有効です。
契約更新時の極度額について
Q:極度額の定めがない既存の賃貸借契約を更新する際は、極度額を決める必要があるか?
A:賃貸借契約の更新に合わせて保証契約も合意更新したり新たな契約を結んだりする場合は、改正民法が適用され、極度額の設定が必要になります。
なお賃貸借契約が更新されれば、特段の事情がない限り保証契約も以前のものが継続されるという判例があります。つまり、賃貸借契約の更新時に保証契約について特に手続きをしなければ、民法改正前の保証内容が継続され、極度額を決める必要はないと考えられています。
極度額が合意されない場合
Q:保証人と極度額について合意できなかった場合はどうすればよいか?
A:保証人から極度額についての合意が得られなければ、保証契約は成立しません。その場合は保証人不要で家賃などを保証できる、家賃債務保証業者の利用を借主に提案しましょう。
近年は、さまざまな理由から保証人を頼める人がいない借主も増えています。家賃債務保証事業者を利用すれば、そうした入居希望者にも物件を貸しやすくなります。保証人制度だけでなく、家賃債務保証事業者も積極的に活用しましょう。
賃貸借契約における極度額についてのまとめ
民法改正により、賃貸借契約において、保証人が支払いを行う場合の極度額を定めることが義務化されました。これは、新規契約だけでなく、既存の契約を合意更新したり契約し直したりする際にも必要です。
ただし、保証人によっては極度額を高額に感じ、同意に難色を示す可能性があります。そうした事態を避けるため、金額の設定理由や制度の意味などを丁寧に説明することをおすすめします。
極度額を定めれば保証人の負担軽減や、実際の請求時のスムーズな支払いにつながります。保証人に極度額について理解してもらい、円滑に同意を得られるよう努めましょう。
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