賃貸物件の浸水被害を防ぐ! 効果的な止水板の活用法を解説
近年、台風や集中豪雨による浸水被害が全国各地で頻発しています。特に都市部では、土地の開発が進む一方で、雨水の流出先が減少し、浸水リスクが高まっています。このような状況下において浸水被害を未然に防ぐためには、事前に適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、賃貸物件やマンションの管理会社を対象に、浸水被害を防ぐための効果的な対策について解説します。止水板を利用した浸水対策や国土交通省の浸水対策ガイドライン、助成金制度の活用方法についても触れていくため、ぜひご一読ください。
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賃貸物件における浸水リスク
浸水リスクが高い地域には、いくつかの共通点があります。たとえば、低地や窪地は豪雨時に水が溜まりやすいため、物件の浸水のリスクが高いといえます。また、河川や海の近くに位置する物件も、氾濫や高潮の影響を受けやすいです。
また、都市部では土地の開発が進み、浸水リスクが高まっています。アスファルトで覆われた地表からは雨水が地下に浸透しにくく、排水能力を超えてしまうことがあるのです。
浸水被害が発生すると、建物や設備に甚大な損害が出るだけでなく、入居者の生活にも大きな影響が及んでしまいます。このようなリスクを未然に防ぐためには、適切な対策を講じることが大切です。
(出典:東京都建設局 洪水ハザードマップ公表状況 )
東京都では、大雨などに備え、洪水ハザードマップが23区26市2町1村で公表されています(2024年月現在)。
浸水対策の基本
浸水対策の基本として、効果的な防水設備や設置方法について見ていきましょう。
止水板とは?
止水板とは、集中豪雨や台風などによって建物に浸水被害が発生するのを防ぐための防水設備です。一般的に、建物の入り口や窓に設置し、水の侵入を防ぎます。
止水板は主に金属製ですが、水が漏れないように接続部分にはゴムなどが付いているため、高い止水性能を持ちます。
土のうとは?
土のうとは土砂を詰めた袋のことで、建物の周囲に配置して水の侵入を防ぎます。手軽に準備できるため、多くの家庭や施設で使用されていますが、設置に手間がかかるのが難点です。
土のうの効果を最大限に引き出すには、適切な作り方と設置方法が大切です。まず、40L程度のごみ袋を2枚重ね、半分ほどまで土を入れて口を閉めます。これを建物の周囲に隙間なく配置することで、水の侵入を防ぐことができます。
止水板と土のうはそれぞれ特徴が異なるため、用途や状況に応じて使い分けることが大切です。
自治体によっては、災害に備えて自由に土のうを取り出せるように土のうステーションなどを設置しているケースもあります
賃貸物件の効果的な止水板設置方法
浸水リスクを低減するためには、賃貸物件に適した止水板の設置が効果的です。ここでは、「手動型止水板」「自動型止水板」「止水ドア」の3種類の止水板についてそれぞれ見ていきましょう。
手動型止水板
手動型止水板は、設置が簡単で扱いやすい防水設備です。軽量でコンパクトなデザインが多く、部品数が少ないため、迅速に設置できます。手動型止水板は賃貸マンションのエントランスにも取り付けやすく、浸水リスクを効果的に低減できます。
実際に、東京都内の賃貸物件では、手動型止水板を導入している管理会社が増えています。手動型止水板は取り外しも簡単なため、浸水リスクが低下したら素早く片付けることができます。
自動型止水板
自動型止水板は、ボタン一つで操作できるシャッター型の防水設備です。高水位の浸水が予想される地域や、豪雨が頻繁に発生する地域に適しています。手動型と比べて設置費用が高額ですが、高い止水性能があります。
たとえば、工場に自動型止水板を導入し、シャッターを閉じるだけで建物内への水の侵入を防げれば、機械や製品を守ることができます。自動型止水板は管理が簡単で、緊急時にも迅速に対応できるため、非常に便利です。
止水ドア
止水ドアは、通常のドアとして機能しながら、緊急時には高い止水性能を発揮する設備です。スチールドアと同様に開閉でき、防火機能も備えたタイプや、小窓付きのタイプもあります。
止水ドアならば、日常的な使用の延長上での浸水対策が可能です。容易に設置でき、定期的なメンテナンスを行うことで、長期間にわたり効果を発揮します。
地下鉄に設置された防水版。止水板や防水板を設置する場合は、その設置スペースの確保も必要です
国土交通省の電気設備の浸水対策ガイドライン
2019年に発生した台風19号では、首都圏の高層マンションの地下部分に設置されていた高圧受変電設備が冠水し、停電が発生しました。この停電によってエレベーターや給水設備が使用不能となり、住民の日常生活に大きな影響を及ぼしました。
こうした事態を受け、電気設備の浸水対策を強化する必要性を認識した国土交通省が2020年に取りまとめたのが「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」です。
ガイドラインの概要は、下表のとおりです。
項目 |
内容 |
---|---|
適用範囲 |
● 高圧受変電設備等の設置が必要な建築物 |
浸水対策の具体的取り組み |
● 浸水リスクの低い上階へ電気設備の設置 |
電気設備の早期復旧のための対策 |
● 所有者・管理者と電気設備関係者の連絡体制整備 |
参考:建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(概要)|国土交通省
賃貸物件やマンションの管理会社がこのガイドラインに沿って対策を行うことで、電気設備の浸水リスクを軽減し、入居者の安全を確保することができます。
(出典:国土交通省 建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインについて)
止水板設置工事助成金制度の活用
止水板の設置には費用がかかりますが、一部の自治体では、その費用を一部助成する制度を設けています。東京都板橋区の助成金制度を例に見ていきましょう。
項目 |
内容 |
---|---|
助成対象者 |
区内において所有または使用する建築物に、止水板設置及び関連工事を行う方で、申請日より1年以上前から区に住民登録をしている方、または区内に登記をしている法人。 |
止水板 |
浸水の恐れがある建築物の出入口などに設置するもので、以下に示す機能を有するもの。 |
関連工事 |
止水板設置に伴い、止水効果を高めるために行う工事 |
助成金の額 |
止水板設置工事等に要した費用の2分の1以内とし、一つの建築物について50万円を限度。(千円未満切り捨て) |
手続き |
1. 事前相談 |
参考:止水板設置工事助成制度について|板橋区公式ホームページ
助成金制度を活用することで経済的負担が軽減され、より多くの賃貸物件に効果的な浸水対策を実施できます。入居者に安心と安全を提供できるだけでなく、自治体との連携を深めることによって、地域全体の防災意識の向上にもつながるでしょう。
安全な賃貸物件管理のために
賃貸物件に浸水対策を行っておくことで、将来のリスクに備えることができ、入居者に安心・安全な生活環境を提供できます。さらに、自治体の助成制度を利用することができれば、経済的な負担を抑えることも可能です。
今後の気候変動によって浸水リスクが増加する可能性もあるため、早めに備えを強化し、万全の賃貸物件管理を目指しましょう。
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