管理物件に感震ブレーカーは必須? 設置時の注意点や補助金制度を解説
感震ブレーカーは、電気火災を未然に防ぐために大切な役割を果たしています。管理を請け負っている物件に感震ブレーカーを設置すると、入居者の安全確保に役立ち、オーナーとの信頼関係の強化にもつながるでしょう。安心できる住環境を整備するために、感震ブレーカーを設置し、防災機能を高めることは有意義です。
今回は、感震ブレーカーの役割や種類、設置するメリットなどを解説します。
目次[非表示]
- 1.感震ブレーカーとは
- 2.賃貸管理物件に感震ブレーカーを設置するメリット
- 2.1.入居者を守れる
- 2.2.管理人不在時でも物件を火災から守れる
- 2.3.防災意識の高さをアピールできる
- 3.感震ブレーカーの種類
- 4.感震ブレーカーを設置するときの注意点
- 5.感震ブレーカー設置時に利用できる補助金
- 6.まとめ
感震ブレーカーとは
感震ブレーカーとは、地震による強い揺れを感知すると、電気を自動的に遮断する機器です。日本は世界のなかでも地震が発生しやすい国であり、防災の面で感震ブレーカーは重要な役割を果たしています。
実際に、地震の揺れに伴う電気機器からの出火や、停電が復旧した際に発生する火災など、地震による火災の約6割は電気が原因であるといわれています。
いざ地震が起こった場合に冷静でいられるとは限りません。避難する際にブレーカーを落とし忘れることや、電気製品のコンセントを抜き忘れてしまう事態が考えられるでしょう。
このような場合でも、感震ブレーカーは強い揺れを感知した時点で自動的に電気を遮断してくれるため、電気火災の発生を防止できます。多くの自治体が感震ブレーカーの設置を推奨していることからも、安心して生活を送るために、感震ブレーカーは大切な存在であるとわかります。
総務省消防庁感震ブレーカーパンフレット
(出典:総務省消防庁感震ブレーカーパンフレット)
賃貸管理物件に感震ブレーカーを設置するメリット
管理を請け負っている物件に感震ブレーカーを設置するメリットは多くあります。
以下で、具体的なメリットを解説します。
入居者を守れる
地震はいつ起こるかわかりません。2024年8月には政府によって「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されたように、巨大地震に遭遇するリスクは常にあります。
そこで、あらかじめ感震ブレーカーを設置すれば、地震に伴う電気火災を防ぎ、入居者を守ることにつながります。地震によるリスクを軽減し、入居者の安全を守ることは、賃貸管理会社の大切な役割といえるでしょう。
入居者に「防災対策が整っている」という安心感を与えることができれば、物件の付加価値が向上し、長期的な入居にもつながります。結果として安定した入居状況を実現し、オーナーの満足度も高められるでしょう。
管理人不在時でも物件を火災から守れる
感震ブレーカーは、強い揺れを感知すると自動的に電気を遮断してくれるため、管理人不在時に地震が発生しても問題なく機能します。24時間体制で管理人を設置しなくても物件を電気火災から守れる点は、感震ブレーカーを設置するメリットです。
防災対策を強化し、物件を守れるようにすれば、オーナーも安心して管理を委託できるでしょう。長期的に物件管理を任せてもらうためだけでなく、災害時の管理責任を問われるリスクを軽減するためにも、感震ブレーカーを設置するメリットは大きいといえます。
防災意識の高さをアピールできる
2019年4月に「首都直下地震緊急対策推進基本計画」が改正され、「地震時等の電気火災の発生・延焼等の危険解消に取り組むべき地域」や、都市計画法に基づく「防火地域」「準防火地域」にある住宅などに対して、感震ブレーカーの設置が勧告されました。
特に管理している物件が該当地域にある場合、感震ブレーカーを設置して防災意識の高さをアピールすることは重要です。また、該当地域以外の地域でも、感震ブレーカーを設置すると、防災面の意識が高いことをアピールできるでしょう。
物件の安全性を高めるだけでなく、政府や自治体の要望に対してきちんと対応することで、賃貸管理会社としての信頼度を高められるでしょう。
大規模地震時における火災の発生状況
(出典:甲府地区広域行政事務組合消防本部 震災時は通電火災に注意!)
感震ブレーカーの種類
感震ブレーカーにはさまざまな種類があります。分電盤の種類や予算などによって、適切な感震ブレーカーを導入しましょう。
分電盤タイプ
分電盤タイプは、分電盤に内蔵されたセンサーが揺れを感知し、ブレーカーを落とすタイプです。設置にあたっては、電気工事士による工事が必要となります。
分電盤以降の電力供給が一括して遮断されるため、予防範囲は各電熱器具などだけでなく、屋内配線全般にわたります。屋内全体の電気を一括で遮断できるため、火災の抑止力に優れている点が特徴です。
コンセントタイプ
コンセントタイプは、コンセントに内蔵されたセンサーが揺れを感知し、当該コンセントからの電力供給のみを遮断するタイプです。電気工事が必要な埋込型と、コンセントに差し込むだけのタップ型が販売されています。
なお、コンセントタイプには「特定機器遮断型」と「一括遮断型」があります。
特定機器遮断型は特定の機器に対する電気のみを遮断できる一方で、一括遮断型は感震センサー(親機)と通電を遮断するコンセント(子機)が分離されており、子機が設置されている箇所の電気供給をすべて遮断することが可能です。
なお、一括遮断型には疑似漏電を発生させブレーカーを切り、屋内すべての電気供給を遮断できるタイプがあります。導入する際には、どのような機能が備わっており、どのような効果が期待できるのかを確認しましょう。
簡易タイプ
簡易タイプは、感震機能を持たない分電盤に装着し、補助的にブレーカーを切るタイプです。地震の揺れによって重りが落下したり、バンドの作動によってブレーカーのノブを操作したりして、電力供給を遮断します。
簡易タイプは電気工事が不要で容易に設置できる一方で、誤作動が起きやすいデメリットがあります。また、分電盤の形状によっては取り付けが困難なことがあるため、すべての分電盤に取り付け可能とは限りません。
感震ブレーカーパンフレット感震ブレーカーとは
感震ブレーカーを設置するときの注意点
電気火災を未然に防ぐために重要な役割を果たしている感震ブレーカーですが、設置にあたって注意すべき点がいくつかあります。
医療用機器を設置している場合はバッテリーを備える
物件の共有部に生命の維持に直結するような医療用機器を設置している入居者がいる場合、電気供給の遮断に対処できるバッテリーを備える必要があります。
電力が一括で遮断されるタイプを導入している物件の場合、専有部に医療用機器を設置している入居者に対して、バッテリーを備えるよう案内する必要があります。
また、感震ブレーカーの種類によっては、医療用機器の回路のみを制御から除外することも可能です。地震が発生したときでも医療用機器が作動し続けるように、入居者へ配慮しましょう。
停電時に作動する足元灯や懐中電灯を常備する
夜間に地震が発生し電気供給が絶たれると、避難時の照明が確保できず、暗闇を歩かなければならなくなってしまう可能性があります。入居者が安心して避難するためにも、停電時でも明かりが点く足元灯や懐中電灯を常備しましょう。
また、防災照明器具として、安全な避難を助けてくれる非常灯(非常用照明器具)も設置しましょう。
定期的な動作確認や部品の交換を行う
いざというときに感震ブレーカーが機能しないと、防災機器としての用をなしません。感震ブレーカーは設置方法や設置環境などによって、経年劣化が生じるおそれがあります。そのため、設置した後は、定期的な動作確認や部品の交換を行いましょう。
定期的な保守管理によって、入居者が安心して生活できる環境を整備することができます。
感震ブレーカー設置時に利用できる補助金
自治体によっては、感震ブレーカーの設置に対して補助金を支給しています。お住まいの自治体の地域防災課(自治体によって課の名称は異なります)で確認してみるとよいでしょう。
たとえば、神奈川県横浜市では「簡易タイプ」の感震ブレーカーの設置に対して、費用の一部を補助しています。自治会・町内会・マンション管理組合が、補助対象となる感震ブレーカーを10世帯以上に対して購入・設置した場合、費用の2分の1(器具1個当たり2,000円を上限、千円未満は切り捨て)が補助されます。
横浜市 感震ブレーカーを設置して、地震火災の発生を抑えましょう!
ほかにも、東京都では木造住宅密集地域の木造住宅に住んでいる方を対象に、コンセントタイプの感震ブレーカーを配布する事業を行っています。
物件が所在する自治体のホームページで、どのような支援を受けられるか確認してみてください。
まとめ
感震ブレーカーは、電気火災を未然に防ぐために大切な役割を果たしています。管理している物件に導入すれば、入居者の安心につながり、オーナーからさらなる信頼を得られるでしょう。
感震ブレーカーにはいくつか種類があり、分電盤の種類や予算などによって最適な製品が異なります。自治体の補助金制度を有効活用しながら、感震ブレーカーの導入を検討してみてください。
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