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みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)とは? 被災者が利用するときの流れや入居条件を解説

みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)とは? 被災者が利用するときの流れや入居条件を解説

みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)とは、災害によって居住する住宅が損壊し、住む場所を失った被災者に対して提供される一時的な住まいです。災害救助法に基づき、民間の賃貸住宅を活用して被災者に住居が提供されます。
 
自然災害はいつ起こるかわからないため、賃貸管理会社として、みなし仮設住宅を提供する場面があるかもしれません。
 
そこで今回は、みなし仮設住宅を被災者が利用する場合の流れや入居条件などを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)とは
  2. 2.被災者がみなし仮設住宅に入居する条件
  3. 3.賃貸仲介会社・管理会社が知っておくべきポイント
    1. 3.1.コミュニケーションや周辺住民への理解喚起
    2. 3.2.入居審査がない
  4. 4.みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)の供給戸数
  5. 5.2024年石川県で適用されたみなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)の事例
  6. 6.まとめ

みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)とは

みなし仮設住宅とは、災害によって住居を失った被災者に住居を貸し出す制度です。民間の賃貸住宅の空室を国や自治体が借り上げ、被災者に一時的に提供します。
 
なお、災害が発生した時点ですべての空室が対象となるわけではなく、物件の所有者が了承した物件のみがみなし仮設住宅として取り扱われます。つまり、みなし仮設住宅として提供するかどうかは、所有者の意思に委ねられるのです。
 
みなし仮設住宅に被災者が入居できる期間は、最長で2年です。居住している期間の賃料は国や自治体から支払われ、被災者は負担をせずに済みます。2年が経過する以前に入居していた被災者が別の住宅に転居した場合は、退去時点でみなし仮設住宅としての役割は終了し、通常の空室に戻ります。
 
反対に、契約期限の2年を過ぎても被災者に「当該物件に住み続けたい」という希望がある場合は、普通賃貸借契約に切り替えて契約をし直す可能性もあります。

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大規模災害が発生した場合、特に被災者の住宅入居支援は優先順位が高く、賃貸型応急住宅の活用が期待されています

被災者がみなし仮設住宅に入居する条件

みなし仮設住宅を利用できるのは、自己の資金のみでは住宅確保が困難であることに加え、以下のいずれかに該当する人です。

●住宅が全壊、全焼又は流失し、居住する住宅がない方、半壊(「中規模半壊」、「大規模半壊」を含む)であっても、住宅として再利用できず、 やむを得ず解体を行う方のいずれかに該当し、罹災証明書をお持ちの方

●二次災害等により住宅が被害を受ける恐れがある、ライフライン(水道、電気、ガス、 道路等)が途絶している等、長期にわたり自らの住宅に居住できないと自治体が認める方

●災害救助法に基づく住宅の応急修理制度を利用する者のうち、修理に要する期間が長期間を超えると見込まれる方 
 
このように、災害の発生によって住居を失った人や、ライフラインが途絶して通常の生活を送れない人がこの仕組みの対象者です。被災した後に日常の生活を取り戻すための支援として、みなし仮設住宅は大切な役割を果たしているといえるでしょう。

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賃貸型応急住宅(みなし仮設)【事業者向け】契約の概要(一例)

​​​​​​​(出典:公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会「賃貸型応急住宅(みなし仮設)【事業者向け】」)         

賃貸仲介会社・管理会社が知っておくべきポイント

物件の所有者が空室をみなし仮設住宅として貸し出す場合、賃貸仲介会社や管理会社は被災者に配慮する必要があります。
 
みなし仮設住宅は社会貢献としての側面もあるため、どのような配慮をすべきか、どのような点に気をつけるべきかを押さえておきましょう。

コミュニケーションや周辺住民への理解喚起

みなし仮設住宅に入居する被災者は、被災によるショックを受けていることもあり、当該地域の生活になかなか慣れることができず、孤立してしまう恐れがあります。
 
被災者が孤立してしまうと、地域のコミュニティに参加できなかったり、近隣住民とのコミュニケーションが希薄になったりして、支援が届きにくくなる恐れがあります。
 
賃貸仲介会社・管理会社は、定期的な訪問を通じて被災者とコミュニケーションを取り、必要に応じて近隣住民への理解喚起を行うとよいでしょう。
 
被災者が精神的に立ち直るのをサポートするためにも、孤立を防いで必要な支援を届けることが欠かせません。

入居審査がない

みなし仮設住宅は、臨時で住居を供給するための仕組みであり、基本的に入居者を選べません。一般的な賃貸住宅のような、入居にあたっての審査は不要です。
 
また、賃料は自治体が負担するため、滞納リスクは発生しません。とはいえ、入居する被災者は災害によって大切な資産や家族・知人を亡くしてしまい、精神的に落ち着かない状況である可能性が考えられます。賃貸仲介会社・管理会社は、被災者の心情に寄り添い、必要に応じて自治体と連携しながらメンタル面のサポートも提供するとよいでしょう。

みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)の供給戸数

みなし仮設住宅は、プレハブで建てられる建設型応急住宅よりも、迅速かつ大量に住居を低コストで提供できるメリットがあります。実際に、以下のように災害時に活用されてきました。

東日本大震災(2011年3月)

68,616戸

熊本地震(2016年4月)

15,925戸

西日本豪雨(2018年7月)

4,361戸

東日本台風等(2019年10月)

3,169戸

(出典:公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会「災害時の住宅支援活動」
 
日本は地震や津波、豪雨などの自然災害がいつ・どこで起きてもおかしくありません。今後も、みなし仮設住宅は、災害時の住居供与において重要な役割を果たすと考えられるでしょう。

2024年石川県で適用されたみなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)の事例

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、実際に石川県でみなし仮設住宅の制度が活用されました。
 
能登半島地震におけるみなし仮設住宅の利用条件は、以下のとおりです。

対象区域

災害救助法が適用されている市町(金沢市、七尾市、小松市、輪島市、珠洲市、加賀市、羽咋市、かほく市、白山市、能美市、津幡町、内灘町、志賀町、宝達志水町、中能登町、穴水町及び能登町)

対象者

以下いずれかの要件に該当する者
・住宅が全壊、全焼又は流失し、居住する住宅がない者
・半壊(「中規模半壊」、「大規模半壊」を含む。)であっても、住宅として再利用できず、やむを得ず解体を行う者
・二次災害等により住宅が被害を受ける恐れがある、ライフライン(水道、電気、ガス、道路等)が途絶している、地滑り等により避難指示等を受けている(※1)など、長期にわたり(※2)自らの住宅に居住できないと市町長が認める者(※3)
・災害救助法に基づく住宅の応急修理制度を利用する者のうち、修理に要する期間が1ヶ月を超えると見込まれる者(半壊以上の被害を受け、他の住まいの確保が困難な者に限る。)
・その他、国と県の協議により、やむを得ず入居すべきと認められた者
※1 雨が降れば避難指示等が発令されるような場合を含む。
※2 「長期にわたり」とは、対策に概ね1ヶ月以上かかり、自らの住宅に居住できない場合を指す。
※3 応急危険度判定により、「危険(赤色)」と判定され、住宅に立ち入ることが困難な者を含む。

賃貸住宅の条件

石川県内にある住宅で、家賃が1ヶ月当たり次の額以下であるもの(次の額を超過するものは認められず、超過分を個人負担することも不可)
【石川県内(金沢市・野々市市を除く)】
・2人以下の世帯:6万円
・3人~4人の世帯:8万円
・5人以上の世帯:11万円


【石川県内(金沢市・野々市市)】
・1人の世帯:6万円
・2人以下の世帯:8万円
・3人~4人の世帯:10万円
・5人以上の世帯:12万

入居期間

入居から2年以内(災害時に借家・公営住宅に居住されていた方は、入居日から1年以内)


※恒久的な住まいの確保後や断水等のライフラインの復旧後、速やかに退去する必要がある

(出典:石川県「賃貸型応急住宅の供与について(みなし仮設住宅)」
 
石川県の場合、みなし仮設住宅を利用する際には、まず被災者が市町の窓口に相談します。市町の窓口で制度の説明や相談先となる不動産団体相談窓口・不動産会社の紹介を受け被災者が当該団体や会社に対して、みなし仮設住宅の有無を確認します。
 
被災者へみなし仮設住宅を案内するのは、不動産団体相談窓口・不動産会社です。
 
居住できるみなし仮設住宅が見つかったら、被災者が市町へ入居の申込書を提出します。その後は被災者・市町・県・住宅所有者間で契約書の作成や送付を経て、入居へと至ります。

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石川県賃貸型応急住宅制度概要チラシ

(出典:石川県 賃貸型応急住宅の供与について(みなし仮設住宅)

まとめ

みなし仮設住宅は、自然災害が多い日本において重要な役割を果たしています。被災者が生活を立て直すための一時的な住居として機能し、実際にさまざまな災害の場面で活用されてきました。
 
みなし仮設住宅には、社会貢献としての側面もあります。賃貸仲介会社・管理会社は、行政と連携しながら、必要に応じて被災者をサポートするようにしましょう。
 
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柴田 充輝
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。保有資格はFP1級・社会保険労務士・行政書士・宅建士。金融メディアや不動産メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆経験がある。自身でも株式投資や不動産投資を行い、実体験に基づく質の高い情報の提供と、読者にとってわかりやすい執筆を心がけている。本業のかたわら、FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。

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