不動産開業は1人でも可能? 成功するための3つの実践ポイントを徹底解説
不動産業を1人で開業できるのか、不安を感じる方は多いものです。特に、店舗開業を経験したことがない方にとって、宅地建物取引業免許の取得や事務所設置、集客体制の構築は未知の課題といえるでしょう。経費や業務負担に対する不安から、一歩を踏み出せない方も少なくありません。
そこでこの記事では、不動産業を1人で開業するための流れや費用、成功のポイントを詳しく解説します。これから不動産開業を目指す賃貸管理会社の方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.不動産開業は1人でも可能
- 2.不動産開業を1人で始める3つの手順
- 2.1.1. 経営形態の選択・事務所の確保・宅建士の設置
- 2.2.2. 宅建業免許の申請と宅建協会への加入
- 2.3.3. 開業
- 3.不動産開業を1人で行う場合の初期費用3選
- 3.1.1. 宅建業免許申請手数料・宅建協会への入会金
- 3.2.2. 事務所設置・通信環境など設備費用
- 3.3.3. 広告宣伝費・ホームページなど集客費用
- 3.3.1.パンフレット制作の費用相場
- 3.3.2.ホームページ制作費用
- 4.不動産開業を1人で行うメリットとデメリット
- 5.不動産開業を1人で成功させるための実践ポイント3選
- 6.まとめ
不動産開業は1人でも可能
不動産業は、1人でも十分に開業可能です。公益財団法人不動産流通推進センターが発表した「2024不動産業統計集(9月期改訂)」によると、1事業所あたりの平均従業員数は3.9人となっており、少人数体制での運営が一般的であることがわかります。
宅地建物取引士の資格を保有していれば、例えば賃貸管理の実務経験しかない方でも、宅建業として新たに開業できます。自ら専任の宅建士となり、営業・契約・事務業務をすべて1人で担う体制を整えることも可能です。
公益財団法人不動産流通推進センターの調査によれば、不動産業の1事業所あたりの平均従業員数は3.9人。不動産代理業・仲介業は4.6人、貸家業・貸間業は2.6人です
(出典:公益財団法人不動産流通推進センター|2024不動産業統計集(9月期改訂)|P10)
不動産開業を1人で始める3つの手順
不動産業を1人で始めるにあたっては、事前の入念な準備が欠かせません。ここでは、不動産開業までの流れを3つの手順に分けて、わかりやすく解説します。
1. 経営形態の選択・事務所の確保・宅建士の設置
不動産業を開業するには、まず個人事業と法人のどちらにするか、経営形態を決める必要があります。経営形態によって、必要な手続きや資金、課される税率が異なるため、慎重な検討が求められます。
併せて、宅地建物取引業法に基づき、専用の事務所も用意しなければなりません。免許申請時には、事務所の所在地や使用権限を証明する書類が必要です。自宅の一部を割り当てる場合は、居住スペースと事務所スペースを明確に分け、必要な基準を守って事務所としましょう。
さらに、宅建士の資格を持つ人を1人以上、専任で配置することが義務づけられています。自身が宅建士であれば、自ら専任者として登録することも可能です。
2. 宅建業免許の申請と宅建協会への加入
不動産業を営むには、事前に宅建業免許の取得が必要です。宅建業免許には以下の2種類があります。
・都道府県知事免許
・国土交通大臣免許
開業予定の事務所が1つの都道府県内に収まる場合は知事免許、複数の都道府県にまたがって支店などを展開する場合は国土交通大臣免許が必要です。1人で開業する場合は本店のみとなるため、都道府県知事免許に該当します。
免許取得後は、営業保証金の供託(1,000万円)が原則として求められますが、宅建協会に加入すればこの供託は不要となり、代わりに60万円の分担金で対応できます。さらに、宅建協会に加入すると、レインズ(不動産流通標準情報システム)の利用や法務相談、業務研修など、さまざまな支援を受けられます。
1人で開業する場合は情報や人脈が不足しがちなため、これらのサポートを積極的に活用することが事業を安定させるポイントとなります。
3. 開業
宅建業免許の交付を受け、必要な登録や設備の準備が整えば、いよいよ事業を開始できます。
ただし、開業はゴールではなく、あくまで事業のスタートにすぎません。1人で開業する場合、すべての判断と行動を自身で行うため、不安や迷いを感じる場面も多くあるでしょう。
そのようなときは、宅建協会の支援制度や経営相談を積極的に活用し、相談相手や業界他社とのつながりを作ることが大切です。
また、顧客から信頼を得るためには、誠実な対応と継続的な情報発信が欠かせません。
自治体や国土交通省ホームページでは申請・届出の様式や方法などが掲載されています。届出先のホームページを参照し準備を進めるとよいでしょう。なお、国土交通省は、2024年5月25日以降宅地建物取引業の免許申請などのオンライン化を開始しました
≫ 5月25日から宅地建物取引業免許申請などがオンライン化
参考:宅地建物取引業の免許申請等のオンライン化について
不動産開業を1人で行う場合の初期費用3選
ここでは、開業に必要な初期費用を3つに分類し、それぞれの相場や具体例を解説します。
1. 宅建業免許申請手数料・宅建協会への入会金
宅建業を始めるには、免許申請に加え、営業保証金の供託または宅建協会(全国宅地建物取引業協会)への加入が必要です。
・免許申請手数料:都道府県知事免許は3万3,000円、国土交通大臣免許は9万円
・営業保証金:1,000万円(宅建協会に加入する場合、60万円の弁済業務保証金分担金で代替可能)
・宅建協会入会金(弁済業務保証金分担金含む):約130万〜180万円
これらを含めた開業資金の目安は、400〜1,000万円程度です。さらに、開業後すぐに売上が立たないリスクに備え、最低でも3ヶ月分の運転資金を確保しておくと安心でしょう。
2. 事務所設置・通信環境など設備費用
宅建業の免許を取得するには、専用の事務所を設置する必要があります。事務所の設置にかかる主な費用は次のとおりです。
・敷金や内装費など:100〜300万円程度
・パソコンやプリンター、電話・FAX回線などの設備費用:20〜100万円程度
不動産業界ではFAXの利用が続いているため、A3サイズ対応の複合機を用意しておくと業務がスムーズです。また、レインズ(不動産流通標準情報システム)を利用するにあたっては、Windows搭載のパソコンと安定した光回線が推奨されています。
3. 広告宣伝費・ホームページなど集客費用
集客のためには、広告や宣伝活動のための初期投資も必要です。たとえば、パンフレット制作の費用相場(500〜1,000部作成した場合の目安)は次のとおりです。
パンフレット制作の費用相場
・2つ折りパンフレット:5〜20万円
・3つ折りパンフレット:8〜20万円
・中綴じパンフレット:20〜40万円
また、ホームページ制作費用にも幅があり、たとえば次のような選択肢があります。導入の際は、ほかに、ホームページの運用にかかる費用も発生するかどうかを確認するとよいでしょう。
ホームページ制作費用
簡易サイト(テンプレート利用)
・初期費用:無料〜
・月額費用:1万円程度
本格サイト(反響・ブランディング重視)
・初期費用:200万円以上
・月額費用:5万円以上
1人で開業するには、限られた予算を効果的に使うことが求められます。費用対効果を意識しながら、優先順位を明確にして集客施策を進めることが大切です。
開業当初は特に出費がかさみがちです。資金計画を十分に立てて準備を進めるのがよいでしょう
≫ 【独立開業】不動産会社の推移と廃業率、失敗しないためのポイントとは
≫ 不動産業の開業に届出は必要?必要書類や提出のタイミングを解説
不動産開業を1人で行うメリットとデメリット
ここでは、不動産開業を1人で行う具体的なメリットとデメリットを解説します。
メリット
1人で不動産開業を行う場合、次のようなメリットがあります。
・業務を自由に選べる
・顧客対応がスピーディにできる
・人件費を抑えられる
自身の裁量で営業方針を決められるため、得意なエリアや特定の物件ジャンルに特化した展開も可能です。
大手企業と異なり、上司の指示や承認を待つ必要がないため、顧客への提案や契約手続きも迅速に行えます。
また、従業員を雇用しなければ、人件費などの固定費を大きく抑えられる点もメリットです。
デメリット
1人で開業する場合、メリットだけでなく次のようなデメリットもあります。
・集客が難しい
・売上に上限が生じる
・人材の代替がきかない
以前勤めていた会社の知名度やネットワークを活用できないことが多く、集客はゼロからのスタートになります。
また、不動産業では、契約対応や広告出稿、物件案内など、多岐にわたる業務を行う必要があるため、1人で対応できる件数にはどうしても限界が生じます。
さらに、体調不良や急用時に代理を担ってくれる人がいないため、事業運営に支障をきたすリスクもあります。
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集客し、成約ができなければ収益性において課題となるため、集客をどのように行っていくかは開業前によく検討しておく必要があるでしょう
≫ 不動産会社の集客方法15選! 自社に合った方法の見極め方も解説
≫ 物件写真で集客力アップ! 他社と差がつく3つの撮影テクニックとポイント
不動産開業を1人で成功させるための実践ポイント3選
ここでは、不動産開業を1人で成功させるための実践ポイントを3つ解説します。
1. 差別化戦略で“小さくても選ばれる会社”へ
1人で不動産業を成功させるには、他社との差をはっきり打ち出すことが欠かせません。大手と同じ土俵で戦うのではなく、次の3点を明確に打ち出すことが重要です。
・どのエリアで
・どの顧客層に
・どんな価値を提供するか
たとえば、「ペット可物件に特化する」「女性限定物件で安心して住める環境をアピールする」「子育て世帯向けに地域密着型で営業する」といった、ターゲットと強みを絞り込んだ訴求が効果的です。
さらに、ネットでの情報発信や口コミ、チラシなどを活用し、オンライン・オフライン両面から認知拡大を図る工夫も必要です。
小さな事業体だからこそ、計画的な戦略設計によって選ばれる存在を目指しましょう。
2. ITツールと外注を活用して業務を効率化
1人で開業する場合、すべての業務を自分だけで抱え込まず、外部の力を上手に活用することが大切です。特に以下のような、日常的に時間を取られる業務については、外注することで本業に集中しやすくなります。
・経理
・契約書作成
・SNS運用
近年では、クラウド会計システムや電子契約システムなど、初期費用を抑えて導入できる便利なITツールも増えています。得意分野に専念できる環境を整えることで、ミスが減り、対応のスピードも向上します。
3. 仲介と賃貸管理を組み合わせて収益を最大化
収益性と安定性を両立させたい場合は、仲介に加えて賃貸管理も取り入れると効果的です。仲介は宅建士資格を生かしやすく、契約成立ごとに収益が得られる点が強みです。
一方、賃貸管理は毎月の管理料が安定して入るため、収入の継続性を高める役割を果たします。たとえば、管理している物件が空室になった際には、自社で仲介活動を行うことで、収益機会を逃さずに対応できます。
このように、単発型の仲介と継続型の賃貸管理をバランス良く組み合わせることで、1人で開業しても事業の安定性を高めることが可能です。
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賃貸仲介、賃貸管理、それぞれ異なる知識と経験が必要です。どのように差別化をしていくか、商圏エリアの状況も含めて検討する必要があるでしょう
まとめ
不動産業の開業は、1人でも十分に実現可能です。必要な資格や手続き、初期費用を正しく把握し、自身の強みを生かした他社との差別化と業務効率化を意識することが成功への近道となります。
特に、仲介と賃貸管理を組み合わせれば、個人経営においての安定性と成長性の両立に役立ちます。最初は不安を感じるかもしれませんが、計画的に準備を進めれば、自分らしい経営スタイルを築くことが可能です。
小さな一歩から、着実に理想の未来へとつなげていきましょう。
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