不動産コンサルティングマスターの取得メリットと勉強方法は
不動産コンサルティングマスターは、不動産業界において高い専門性や信頼性を証明できる資格です。
近年、ライフスタイルや社会環境の変化によって不動産活用のニーズが多様化する一方で、人口減少や高齢化に伴う空き家・空き地が増え、どのように有効活用するかが全国的な課題となっています。
このような状況のなか、宅地建物取引業者には、媒介業務だけでなく幅広いコンサルティング業務の提供が求められています。
また、不動産コンサルティングマスターの資格を取得し、不動産の有効活用や相続対策、投資コンサルティングなどのサービスを提供することで、媒介業務とは別にコンサルティング報酬を受領しやすくなるでしょう。
本記事では、不動産コンサルティングマスター資格を取得するメリットや試験概要、効果的な勉強方法などを紹介します。
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不動産コンサルティングマスター資格の概要
「公認不動産コンサルティングマスター」は、1993(平成5)年度に始まった資格です。以前は「不動産コンサルティング技能登録者」という名称でしたが、2013(平成25)年に現在の名称に変更されました。
不動産の有効活用や相続対策、投資など、多岐にわたる不動産コンサルティング業務を行ううえで必要な知識や能力に関する試験を行い、合格者のうち実務経験など一定の要件を満たした者を「不動産コンサルティングマスター」として認定します。
受験資格があるのは、次の3つの国家資格登録者のみです。
・宅地建物取引士
・不動産鑑定士
・一級建築士
不動産コンサルティングマスターとして登録されるには、各資格における5年以上の実務経験、3年以上5年未満の場合は、指定された講習を終了する必要があります。
加えて、資格保有者としての倫理規定と資格更新のための継続的な能力向上要件が定められているため、信頼性の高い資格といえます。
また、公認不動産コンサルティングマスターのなかでも、一定の分野についてさらに専門的な技能を有する者を「専門士」として認定する制度を設けています。
現在、相続対策のスペシャリストとして「相続対策専門士」、不動産を多角的な視点から分析・評価し、有効な活用方法を導き出すスペシャリストとして「不動産エバリュエーション専門士」の2つがあります。
不動産コンサルティングマスターは、国家資格である宅地建物取引士、不動産鑑定士、一級建築士の3つが受験資格対象となり、信頼性の高い資格であるといえます
資格を取得するメリット
不動産コンサルティングマスターを取得するメリットについて解説します。
宅建業務とは別に、独立してコンサルティング報酬を受領できる
この資格を取得することで、宅建業務とは別に、独立して行うコンサルティング報酬を受領しやすくなる点が挙げられます。
2024(令和6)年7月1日、国土交通省が策定した「不動産業による空き家対策推進プログラム」の一環として、 「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(通達)が改正されました。
これによって、不動産取引における媒介業務以外のコンサルティングなどの関連業務について、媒介報酬とは別に報酬が受領できることが明確にされました。
高度な専門的知識を有する不動産コンサルティングマスターとして、不動産の利用や取得、運用などに関するクライアントの課題を解決することで、媒介業務とは別の独立した報酬を得ることができます。
「不動産業による空き家対策推進プログラム」概要
(出典:国土交通省 不動産業による空き家対策推進プログラム ~地域価値を共創する不動産業を目指して~ )
≫ 不動産業による空き家対策推進プログラム|媒介報酬の見直しを含めて解説
法令上の制度に関する資格を取得できる
公認不動産コンサルティングマスター資格を取得することで、次の資格も同時に得られます。
・「不動産特定共同事業法」※1における「業務管理者」となる資格(ただし、宅地建物取引士資格が必要)
・「不動産投資顧問業登録規程」※2における「登録申請者」および「重要な使用人」の知識についての審査基準を満たす資格
・「金融商品取引法」における「不動産関連特定投資運用業」※3を行う場合の人的要件を満た資格
※1 不動産特定共同事業とは、投資家から出資を受けて賃貸不動産などの収益事業を行い、その収益を投資家に分配する事業の仕組みを定めた法律
※2 不動産投資に関する助言や投資一任業務などを行う者を登録するにあたっての規程
※3 顧客から投資について一任を受けて、不動産信託受益権などを投資対象として運用する投資運用業
不動産コンサルティング地域ワーキンググループの登録要件
国土交通省が主導する「不動産業による空き家対策推進プログラム」では、空き家流通のビジネス化を支援する施策として、媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進が掲げられました。
これに伴って、「公認不動産コンサルティングマスター」を核として、全国でコンサルティング実務に関するノウハウの共有や一般消費者への相談対応などを実践する団体を「不動産コンサルティング地域ワーキング・グループ(地域WG)」として登録する制度が創設されました。
地域WGに登録申請する組織・団体の登録要件として、少なくとも不動産コンサルティングマスター1名以上の届出が必要です。そのため不動産コンサルティングマスターの需要は高いと考えられます。
国土交通省は、消費者が信頼できる不動産コンサルティングサービスの普及を推進するために、不動産コンサルティング地域ワーキング・グループを創設しました。良質な不動産コンサルティングサービスの推進体制とその効果
(出典:国土交通省 「不動産コンサルティング地域WG」の登録を開始します!~消費者が信頼できる不動産コンサルティングサービスの普及を推進~)
≫ 不動産コンサルティングサービスの普及に向けた地域WG登録制度がスタート
不動産コンサルティングマスター試験の概要
ここでは、不動産コンサルティング技能試験の日時や試験地などの情報を紹介します。試験の概要は次のとおりです。
試験日時 |
毎年1回、11月第2日曜日に実施 |
---|---|
受験資格 |
「宅地建物取引士」「不動産鑑定士」「一級建築士」いずれかの資格登録者で、現に業務に従事している、または今後従事しようとする人 |
試験地 |
札幌・仙台・東京・横浜・静岡・金沢・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄 |
試験科目 |
択一 |
記述 | |
受験料 |
31,500円(税込) |
最新情報は公認不動産コンサルティングマスターホームページを参照ください
(出典:公認不動産コンサルティングマスター)
参照:公益財団法人 不動産流通推進センター「公認不動産コンサルティングマスター 試験概要」
不動産コンサルティングマスターの合格率
不動産コンサルティングマスター試験の合格率を抜粋すると次のとおりです。
年度 |
合格率 |
---|---|
2024年度 |
41.8% |
2023年度 |
45.2% |
2022年度 |
42.7% |
2021年度 |
37.9% |
2020年度 |
43.3% |
2019年度 |
40.7% |
参照:公益財団法人 不動産流通推進センター「公認不動産コンサルティングマスター 試験概要」
およそ40%前後の合格率と、比較的難易度は低い試験のようにも思えます。
その面、受験資格として一定の資格と実務経験が必要であり、実務を通じて一定の知識を有していること、また、さらに高い専門性を身につけようとする意欲が高い受験者でも半分以上は不合格になる試験ともいえます。
なお、合格するには、択一式試験(50問100点満点)と記述式試験(5問100点満点)を併せた200点満点のうち一定基準以上の点数が必要です。合格基準は年度によって変わり、2024(令和6)年度は、200点満点中110点が合格基準点でした。
資格取得に必要な勉強時間と勉強方法
不動産コンサルティング技能試験合格者へのアンケートによると、総勉強時間は、50~100時間と回答した人が全体の35%、100~200時間が34%となっていることから、必要な勉強時間の目安は、50~200時間程度といえるでしょう。
勉強方法としては、テキストや過去問を活用して独学で勉強した人の割合がもっとも多くなっています。
また、およそ半数の人が、不動産流通推進センターが実施するインターネット通信講座や具体的なコンサルティングの考え方や進め方を学べるステップアップ・スクーリング(半日集合研修)を活用しています。
不動産コンサルティングマスター試験は例年11月に開催されるため、勉強時間がどれくらい確保できるか、逆算して試験時期を検討するとよいでしょう
参照:公益財団法人 不動産流通推進センター「公認不動産コンサルティングマスター 合格者の声」
まとめ
不動産コンサルティングマスターは、不動産取引における専門性を証明するものとして、顧客の信頼を得ながら、媒介業務にとどまらない幅広いコンサルティング活動を可能にする資格です。
不動産活用や相続、投資に関する顧客のさまざまな課題解決の提案を行うことで、媒介報酬以外の報酬を得られる機会が増え、一取引あたりの売上アップも期待できます。
試験合格のためには50~200時間程度の勉強が必要ですが、適切な方法で計画的に取り組むことで合格できる資格です。
不動産業務の多様化、複雑化が進むなかで、今後ますますニーズが高まると考えられる不動産コンサルティングマスターの資格を取得してはいかがでしょうか。
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