水道メーター交換の基礎知識|私設・公設の違いと費用負担を徹底解説
水道メーター交換は賃貸管理において欠かせない業務ですが、「誰が費用を負担するのか」「いつ交換すべきか」が明確に理解されず、後回しにされるケースも少なくありません。
適切な交換を怠れば法的リスクを抱えるだけでなく、入居者からのクレームや管理会社への不信感にも直結します。さらに、私設メーターと公設メーターでは費用や手続きの負担範囲が異なるため、判断を誤るとトラブルにつながりかねません。
そこでこの記事では、水道メーターの基礎知識・交換頻度・私設と公設の違い・費用負担・設置場所ごとの注意点を解説します。マンションやアパートの管理会社の方は、ぜひ参考にしてください。
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水道メーターとは使用水量を計測する計量器
水道メーターは、建物で使用された水量を正確に測定するための計量器です。設置の目的は「検針」と「点検」であり、入居者ごとに公平に水道料金や下水道使用料を算定するため、また漏水などを確認するために欠かせない設備だといえます。
水道メーターの種類は大きく次の2つに分けられます。
・直読式
表示された数字を左から順に読み取る方式で、一般的に多く普及している
・円読式
複数の円形メーターに設けられた黒い指針を順に読む方式で、古い建物などでは現在でも使用されている
どちらの形式であっても、正確に検針するには読み取り方法の理解が必要です。形式の違いはあるものの、水道メーターは料金精算だけでなく、漏水の発見や設備異常の把握にも役立つため、管理会社にとって維持管理が必須の重要な機器といえます。
「池田市上下水道部 水道メーターの読み方」より、直読式と円読式の違い
水道メーター交換の頻度は8年(計量法による規定)
水道メーターは、計量法により8年ごとの交換が義務付けられています。
長期間使用すると、メーター内部部品の摩耗や劣化により、誤差が生じる可能性があります。このような正確に計測できない状態で使い続けると、実際の使用量より多く請求されたり、反対に少なく算定されたりするなど、料金トラブルに発展しかねません。そこで、計測精度を保つためにこの頻度が定められているのです。
交換費用の負担者は設置主体によって異なり、公設メーターは水道局が負担し、私設メーターは所有者が負担します。
水道メーター交換時期の確認方法
水道メーターの交換時期は、検定証印(メーターが計量法で定められた精度を満たしていることを示すマーク)の記載によって確認できます。検定証印は次の場所に表示されていることが一般的です。
・メーターの蓋の裏
・封印玉(メーターの計量有効期間と有効期限が刻印されたもの)
・側面
有効期限は従来、和暦で「10/12=平成10年12月まで」といった形式で表示されるのが一般的でした。現状では多くの現場で、この和暦表記を基準に交換時期を確認しています。
しかし、2019年1月以降に検定を受けたメーターは西暦表記に統一されており、「2030年12月」や「’30.12=2030年12月」といった表示方法に変わっています。今後は和暦から西暦への移行が進むため、現場では両方の表記を正しく読み取れる知識が求められます。
管理会社としては、定期点検時に必ず検定証印を確認し、交換予定時期をオーナーや入居者に事前に伝えておくことで、トラブル防止とスムーズな交換対応につながります。
経済産業省 検定証印等のイメージ
水道メーターの交換を怠った場合の影響
水道メーターを有効期限内に交換しないまま使用すると計量法違反となり、次のような罰則がオーナーに科される可能性があります。
・6ヶ月以下の懲役
・50万円以下の罰金
・その両方
さらに、交換を怠れば誤計測による料金トラブルも発生しかねず、オーナーに余計な不安を与える原因にもなります。管理会社としては、入居者対応と同じくらいオーナーへの説明責任も重要です。
物件の定期訪問時に検定証印を確認し、交換予定時期をオーナーに事前に伝えておけば、費用負担や実施内容の共有もスムーズにできます。このようにして不安を解消しておくことで、安心して管理を任せてもらえる体制の構築につながるでしょう。
水道メータの設置場所が屋外であれば、基本的に立ち会いは必要ありません
水道メーター交換における私設・公設の違いと費用負担
水道メーターには私設と公設の2種類があり、それぞれの特徴が異なります。ここでは、私設メーターと公設メーターの違いや、費用負担に関して起こりやすいトラブルについて解説します。
私設メーターの特徴
私設メーターとは、建物全体に設置された公設の親メーターから枝分かれし、各戸ごとに設置される子メーターのことです。子メーターはオーナーや管理会社が設置・維持管理を行い、水道局は親メーターの数値を基に建物全体の水道料金を請求します。
たとえば、マンションの各戸に子メーターを設ければ、入居者ごとの使用量を把握でき、公平な料金請求が可能になります。
公設メーターの特徴
公設メーターは水道局が設置・管理するもので、検針や料金請求もすべて水道局が行います。各戸に直接公設メーターを導入すれば、オーナーや管理会社は使用量の計測や料金の按分といった業務を担う必要がなくなり、入居者への請求や料金回収の負担がなくなります。
さらに、交換の際も水道局が費用を負担するため、維持管理コストを抑えられる点も大きなメリットです。
公設メーターの場合、自治体から取替のお知らせがはがきなどで通知されます
費用負担でトラブルになりやすい事例
水道メーター交換では、費用負担の所在をめぐり誤解やクレームに発展するケースがあります。
・私設メーターの場合
私設である子メーターの設置・交換・維持管理は原則としてオーナーの負担です。ただし、その費用を家賃や共益費に上乗せする際には、その旨を説明しておかないと「根拠が不透明」「値上げの理由が不明」といった入居者からの不満につながります。
適切な費用内訳の説明や事前周知を欠くと、管理会社に対する信頼低下を招く恐れがあります。
・公設メーターの場合
導入するには建物が一定の基準を満たす必要があり、各戸ごとの水道加入金や改修工事費をオーナーが負担する場合があります。管理業務の負担が軽減される一方で、初期費用が大きくなる点を理解しておくことが欠かせません。
トラブルを避けるには、契約時点で費用負担の範囲を明確にし、オーナーや入居者へ十分に説明しておくことが重要です。
水道メーター交換の費用負担は公設メーターか私設メーターかで異なります
【建物別】水道メーター設置場所と交換時の注意点
水道メーターの設置場所は建物の種類によって異なり、交換作業の流れや注意点も変わります。ここでは、建物ごとに代表的な設置場所と交換時の注意点を解説します。
マンション
マンションの水道メーターは、パイプや給湯器と一緒にメーターボックス内に収められており、普段は扉で覆われています。建物によっては扉が施錠されており、入居者が勝手に開けることができない場合もあります。
交換時は、まず止水栓を閉めてからメーターを取り外し、新しいメーターに付け替えた後に通水確認を行います。この作業中は断水となるため、入居者に事前通知を行うことが必須です。
マンションでは複数世帯に影響が及ぶため、管理会社が適切なタイミングや方法で周知を行うことで、円滑な交換につながります。
アパート
アパートはマンションよりも部屋数が少なく、交換する水道メーターの数も限られます。場所としては、敷地内の地面に埋め込まれたボックス内に設置されるケースが一般的です。
蓋には「水道」や「量水器」といった表示があり、内部にメーターが収められています。蓋は施錠されていないことが多く、確認自体は容易ですが、複数戸分のメーターが同じ場所に設置されているため、誤って別の部屋のメーターを操作してしまう恐れがあります。
交換時には対象の住戸を正しく特定することが重要であり、管理会社が現場確認を徹底することでトラブルを未然に防ぐことが可能です。
一戸建てやそのほかの建物
一戸建て住宅では、アパートと同様に、地面に設置された「水道」や「量水器」と表示された蓋付きボックス内に収められています。検針の利便性を考慮し、敷地の外側や道路沿いに配置されるケースも多く見られます。
交換時に蓋の周囲が植栽や車で塞がれていると作業が難航するため、事前に作業環境を整えることが重要です。
一方、ビルなどの大規模建物では、水道メーターは屋上や機械室といった一般利用者が立ち入れない場所に設置されます。止水栓が不正に操作されると建物全体の給水が止まるため、イタズラ防止を目的とした配置だといえます。
交換時には断水の影響を最小限に抑えるため、テナントや利用者への事前周知と立ち会い日程を調整しておきましょう。
量水器は敷地内や庭などに設置されています。雪に覆われていたり車が駐車されていると検針や点検が出来ないため注意が必要です
まとめ
水道メーターの交換は、計量法に基づき8年ごとに行うことが義務付けられており、所有形態や設置方式によって費用負担の範囲が異なります。特に管理会社においては、私設メーターと公設メーターの違いを正しく理解し、交換費用や手続きの流れをオーナーや入居者にわかりやすく説明することが重要です。
また、マンション・アパート・一戸建て・ビルなど、建物の種類によって設置場所や交換時の注意点が異なるため、現場に応じた適切な対応が求められます。交換を怠れば法的リスクやクレームに直結するため、事前周知と正しい知識の共有が欠かせません。
水道メーター交換は単なる設備管理にとどまらず、オーナーや入居者との信頼関係を守り、物件価値を維持するうえでも不可欠な業務といえるでしょう。
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