賃貸物件で断水発生! 原因から対応、賃料減額の判断まで徹底解説
賃貸物件で断水が発生した際には、管理会社による迅速かつ的確な対応が求められます。
原因の特定や復旧の見通しに加えて、入居者への対応や賃料減額の判断も重要な業務です。特に水が使えない状態が長引いた場合、どの程度の減額が適切か判断に迷うこともあるでしょう。
この記事では、断水の主な原因や初動対応の手順、賃料減額への対応、断水が発生した際に取るべき対応策などを詳しく解説します。管理物件におけるトラブル対策を強化したい賃貸管理会社の方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
賃貸物件で断水が発生する主な原因4つ
アパートやマンションで発生する断水には、いくつかの代表的な原因があります。ここでは、特に発生しやすい4つの原因について解説します。
1. 給水ポンプや配管の老朽化・故障
給水ポンプや配管の老朽化は、賃貸物件で頻発する断水原因の1つです。多くの物件では、「直結給水方式(主にアパート)」または「受水槽方式(主にマンション)」が採用されています。
・直結給水方式:貯水槽を経由せず、配水管の水圧で直接各戸に給水する方式
・受水槽方式:いったん水槽に水を貯めてからポンプで各戸へ供給する方式
いずれも電気でポンプを作動させており、一般的な耐用年数は10~15年程度とされています。部品の劣化や電気系統の故障が進むと、断水を引き起こすリスクが高まります。
また、配管の老朽化によって漏水が生じた場合も、修繕のために一時的な断水が必要です。定期点検や計画的な更新を行い、断水の予防に努めましょう。
2. 停電による給水設備の停止
停電が発生すると給水ポンプが停止し、断水に至ることがあります。
給水ポンプは電気で作動するため、停電時には各戸に水を送ることができません。特に受水槽方式を用いている中高層マンションでは、水圧だけでの自然給水が困難なため、停電の影響が大きくなります。短時間の停電であっても、復旧までの間は断水が続く可能性があるため注意が必要です。
非常用電源の設置や、停電時の入居者対応マニュアルをあらかじめ整備しておくことで、影響の拡大を抑えることができます。
3. 寒波などによる水道管の凍結
冬季に気温が氷点下になると、水道管が凍結し断水が発生することがあります。
軽度の凍結であれば気温の上昇とともに自然解凍しますが、水が氷になる過程で体積が増えるため、管内の圧力が高まり、配管が破裂するおそれがあります。特に北側の外壁に沿った露出配管や、屋外に設置された蛇口・給水設備は凍結しやすく、損傷のリスクが高いといえます。
断水や配管破裂を防ぐ事前対策としては、水抜栓がある物件であれば水抜き、保温材の設置や、夜間に少量の水を流し続けるなどの方法が効果的です。
≫ 水道管凍結は何度から起こる? 防止方法や修理費用を解説
4. 地震や道路工事など外的要因による断水
自然災害や工事によって水道管が損傷し、断水が発生するケースもあります。たとえば、以下のような事例が挙げられます。
・地震によって水道管が破裂する
・台風による増水で水道管に亀裂が入る
・道路工事中に誤って水道管を損傷する
これらの被害が発生した場合、安全確認や修復作業が完了するまで断水が継続します。こうした外的要因は管理会社だけでは防ぎきれないため、自治体の工事予定情報を定期的に確認し、入居者に随時周知することが重要です。
集合住宅の給水方式の違い。東京都は直結給水方式への切り替えを推進しています
(出典:東京都水道局 直結給水方式の普及・促進)
賃貸物件で断水が発生した場合に必要な賃料減額対応
賃貸物件で断水が発生した場合、状況によっては賃料の減額を求められることがあります。ここでは、減額対象となる条件とその判断基準について解説します。
「水が使えない状態」は賃料減額の対象になる?
断水によって水が使えない状態になった場合、法律上、賃料を減額しなければならない可能性があります。2020年4月1日に施行された改正民法第611条では、賃貸物件の一部が使用できない場合、滅失部分の割合に応じて賃料を減額すべきと定められています。
第611条 |
引用:国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)|住宅の賃貸借契約に関連する民法改正の概要|3-5賃借物の一部滅失等による賃料の減額等に関して|P6
たとえば、給水ポンプの故障で長時間水が使えない状態が続いた場合、水回り機能が失われたと見なされ、賃料減額を請求されることがあります。改正民法の内容を踏まえ、設備の不具合による断水には、管理会社として慎重かつ早期の対応が求められます。
日本賃貸住宅管理協会のガイドラインに基づく賃料減額の目安は30%
断水による賃料減額の判断にあたっては、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が策定した「賃料減額ガイドライン」が参考になります。このガイドラインでは、水が使用できない状態が続いた場合、1日あたりの減額割合を30%、免責日数を2日と定めています。
たとえば、家賃8万円の物件で4日間断水が続いた場合の減額の目安は次のとおりです。
月額賃料8万円×賃料減額割合30%×(4日-免責日数2日)÷30日=1,600円 |
管理会社としてガイドラインを踏まえた対応を行うことは入居者の信頼を得るうえで重要です。なお、この「賃料減額ガイドライン」は、法的拘束力はありません。あくまで減額する際の目安を示しており、賃料減額割合や免責日数は状況に応じて調整することができます。
参照:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会|貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン
国土交通省の「改正民法施行に伴う民間賃貸住宅における対応事例集」では、エアコン故障や上階からの漏水発生時の対応事例などが掲載されています
参考:国土交通省 改正民法施行に伴う民間賃貸住宅における対応事例集
賃貸物件で断水が発生した際に取るべき3つの対応策
ここでは、賃貸物件で断水が発生した際に管理会社が取るべき3つの対応策について具体的に解説します。万一のトラブル発生時にも落ち着いて対応できるよう、手順を確認しておきましょう。
1. 断水の原因を特定し、復旧までの目安を把握する
断水が発生した際は、まず水道の元栓や止水栓が閉まっていないか確認することが基本です。
元栓は玄関横のパイプスペースやメーターボックス内にある場合が多く、単純に元栓が閉まっているために断水しているケースもあります。設備の状態を確認しても改善しない場合は、給水ポンプの故障や近隣の工事が原因である可能性があるため、水道局や設備業者への連絡が必要です。
また、断水の範囲が建物全体なのか一部なのかを正確に把握することで、復旧までの時間を予測しやすくなります。
2. 入居者とオーナーに迅速かつ正確に状況を伝える
断水が確認された時点で、速やかに入居者およびオーナーへ情報を共有することが重要です。対応が遅れると不信感やクレームの原因となるため、可能な限り迅速な周知が求められます。
すべての状況が明らかではない場合でも、現時点で判明している内容を伝えることで安心感につながります。共有方法としては、掲示物の設置やポスティング、メール配信などが効果的です。
以下に案内文の例を示します。
「断水のお知らせ」案内文例
断水のお知らせ 2025年〇月〇日 入居者各位 〇〇管理会社(TEL:000-0000-0000) |
こうした情報提供は、入居者の不安や混乱を最小限に抑えると同時に、オーナーとの信頼関係を維持するうえでも欠かせません。
現場対応と並行して、冷静かつ誠実な説明を心がけることがトラブル拡大の防止につながります。
3. 断水復旧のために専門業者へ迅速に依頼する
断水の原因が特定できず、自社での対応が難しい場合は、速やかに水道設備の専門業者に連絡する必要があります。漏水や配管破損などの修復には専用機器と高度な知識を要するため、管理会社のみでの対応には限界があるためです。
依頼時には、以下の情報を正確に伝えることで、担当者による現地対応がスムーズになります。
・断水が発生した時間
・水漏れ音や異臭の有無
・断水の範囲(建物全体か一部か)
現場の状況を把握し、必要な情報を整理して共有することは、管理会社にとって欠かせない業務の1つです。
断水発生時の一時対応として入居者への告知や修理の手配など迅速な対応が求められます
まとめ
賃貸物件における断水は、入居者の生活に直結する重大なトラブルです。早期の原因特定と適切な初動対応、さらにガイドラインに基づいた賃料減額の判断が、信頼関係の維持につながります。
加えて、日常的な設備点検や管理体制の見直しによって、再発リスクを抑えることも可能です。管理会社として冷静かつ迅速な対応を重ねることで、入居者・オーナー双方からの信頼を高めることができます。
こうした経験を糧に、「選ばれる管理会社」へと成長していきましょう。
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