2025年度賃貸不動産経営管理士・問44で読む「空き家対策法」実務~活用促進区域/管理不全空家/支援法人をどう使うか~

2025年度の賃貸不動産経営管理士試験の問44では、現在我が国が抱える空家問題に対する対策からの出題でした。例年出題される内容でしたが、正答率33.7%とかなり難しく、公式テキストを読み込んだだけでは解けない問題だったといえます。
先に、問題を見てみましょう。皆様も実際に解いてみてください。
【問題】 空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策法)に基づく空き家対策に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。(2025年度問44) |
1 空家対策法による空き家対策の3つの柱は、登記の義務化、管理の確保、建物状況調査の推進である。
2 市町村長は、そのまま放置すれば特定空家になるおそれのある空家を所有者不明空家として認定し、管理指針に即した措置を指導・勧告することができ、勧告を受けた所有者不明空家は、固定資産税の住宅用地特例の適用が除外される。
3 空家等活用促進区域は、市町村が区域や活用指針等を定め、用途変更や建替え等を促進する区域である。
4 市町村長から指定されたNPO法人、社団法人等の空家等管理活用支援法人の役割は、所有者等への普及啓発、市町村長から情報提供を受けた所有者等との相談対応を行うことであり、市町村長に財産管理制度の利用を提案することは認められていない。
空き家対策は「3本柱」+現場接続
国土交通省の整理では、空き家対策は概ね、
①活用拡大
②管理の確保
③特定空家等への対応(除却等)
の3本柱として語られます。
したがって、選択肢1の「登記の義務化」「建物状況調査の推進」を入れて3本柱とする把握は、政策体系として正確ではありません。
ちなみに、登記の義務化(相続登記の申請義務化など)は、所有者不明土地・所有者探索コストを減らし、空き家対策の前提条件を整える政策です。ただし、これは主に不動産登記法・民法(相続)系の制度改正であり、空家対策法が直接「3本柱」として掲げている政策パッケージとは性質が異なります。
つまり、登記の義務化は空き家対策にとって「重要なインフラ」ですが、空家対策法の体系が狙う「活用拡大/管理確保/特定空家等への措置」とは政策レイヤーが違うわけです。
また、建物状況調査(いわゆるインスペクション)の推進は、住宅の流通やリフォーム判断に資するため、空き家の活用促進に間接的に効きます。しかし、空き家対策として見ると、インスペクションは「調査をしたから空き家が減る」わけではなく、次の意思決定(改修・賃貸化・売却・解体)を行う主体の行動があって初めて効果が出ます。
そのため、空家対策法が制度として前面に置くのは、インスペクションのような「任意の支援策」よりも、管理不全空家等への指導・勧告や、活用促進区域などの行政主導の枠組みになります。
なお、管理会社・仲介会社の実務に直結するのは、まさに①②で、特に②の領域では、自治体の指導と勧告が税制(住宅用地特例)と接続している点が重要です。
キーワードは「管理不全空家」
選択肢2について、
まず、自治体が「そのまま放置すれば特定空家等になり得る」として捉えるのは、一般に所有者不明空家ではなく、管理不全空家等(適切な管理が行われず、放置すれば特定空家等に該当するおそれがある状態)という整理で語られます。
次に、固定資産税等の住宅用地特例の除外が問題になるのは、自治体から勧告を受けたケースで、対象は特定空家等に加えて管理不全空家等にも広げられている、という実務線です。つまり「所有者不明空家」だから除外、ではありません。
ここは管理会社にとって営業のツールにもなります。所有者に対し、勧告の持つインパクト(税負担の増加可能性)を説明できるかどうかで、管理受託・修繕提案・活用提案の説得力が変わります。
活用促進区域は「用途変更・建替えを前に進める箱」
空家等活用促進区域は、市町村が区域を定め、活用の指針等を示しながら、用途変更や建替え等を促進していく制度として整理されています。
ちなみに、空家対策法は、従来「特定空家等」に対する指導・勧告・命令・代執行といった「除却・是正」を軸に運用されてきましたが、これだけでは空き家の増加を十分に抑えられず、また「危険ではないが活用されない空き家」が地域に滞留し、中心市街地の空洞化や住宅ストックの劣化を招くことが課題となっていました。
そこで令和5年改正では、空き家対策を「管理」だけでなく「活用」へも明確に拡張し、エリア単位で用途変更や建替え等を促進する仕組みとして空家等活用促進区域が新設されました。これは、空き家を単なる問題物件ではなく、地域再生の資源として流通・活用につなげるための制度的基盤と位置付けられます。
管理・仲介の現場では、活用促進区域は「空き家を物件化する際に、行政の後ろ盾(制度目的)が立つ場所」です。たとえば、
- 改修して賃貸化する(住宅・共同住宅・簡易宿所等の論点も地域で変動)
- 建替え・用途変更の検討に入る(都市計画・建築規制の事前相談が前提)
- 所有者の意思形成(放置コスト vs 活用収益)を設計する
といった局面で、区域指定は「提案の起点」になり得ます。制度は行政側の都合で走りますが、現場側はそれを案件化の追い風として読めると強いです。
支援法人は「財産管理制度の活用提案」まで射程に入る
選択肢4について、
空家等管理活用支援法人(NPO法人、社団法人等の指定)の役割を「普及啓発・相談対応」に限定し、財産管理制度の利用提案ができないとしていますが、この理解は不適切です。
支援法人の制度設計は、自治体だけでは回らない所有者対応を外部の担い手に接続する趣旨が強く、制度利用の提案まで含めて機能させる方向で整理されています。
管理会社の観点で言えば、「所有者と連絡が取れない/相続が止まっている」系の案件は、現場が最初に異常を検知します。支援法人が動ける枠組みを把握しておくと、自治体への繋ぎ方(相談ルート)が設計しやすくなります。
過去問にチャレンジ
【問題】 空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策法)に基づく空き家対策に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。(2025年度問44) |
1 空家対策法による空き家対策の3つの柱は、登記の義務化、管理の確保、建物状況調査の推進である。
2 市町村長は、そのまま放置すれば特定空家になるおそれのある空家を所有者不明空家として認定し、管理指針に即した措置を指導・勧告することができ、勧告を受けた所有者不明空家は、固定資産税の住宅用地特例の適用が除外される。
3 空家等活用促進区域は、市町村が区域や活用指針等を定め、用途変更や建替え等を促進する区域である。
4 市町村長から指定されたNPO法人、社団法人等の空家等管理活用支援法人の役割は、所有者等への普及啓発、市町村長から情報提供を受けた所有者等との相談対応を行うことであり、市町村長に財産管理制度の利用を提案することは認められていない。
正解:3
1不適切 空家対策法による空き家対策の3つの柱は、「活用拡大」「管理の確保」「特定空家の除去など」とされています。
2不適切 市町村長は、そのまま放置すれば特定空家になるおそれのある空家を「管理不全空家」として、管理不全空家に対し、管理指針に即した措置を指導・勧告します。勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例の適用(200m2以下の部分について課税標準が1/6等に減額される)の対象からは除外されます。「所有者不明空家」ではありません。
3適切 空家等活用促進区域は、市町村が区域や活用指針等を定め、用途変更や建替え等を促進するための区域です(空家対策法7条等)。
4不適切 支援法人制度として、市町村長がNPO法人、社団法人等を空家等管理活用支援法人に指定し、指定された支援法人が、所有者等への普及啓発、市町村からの情報提供を受け所有者との相談に対応します。この支援法人は、市町村長に財産管理制度の利用を提案することもできるので、本肢の記述は不適切です(空家対策法24条)。









