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物件調査完全ガイド 不動産取引に必要な5つのステップと3つの注意点

物件調査完全ガイド 不動産取引に必要な5つのステップと3つの注意点

不動産売買の仲介において、物件調査は欠かせない業務のひとつです。
 
しかし実際には、「どこまで調べるべきか」「どのような手順で進めるか」といったことが明確でないまま進行することも珍しくありません。とはいえ、調査に漏れがあると、契約後のトラブルにつながるおそれがあるため、慎重な対応が求められます。正確な調査を行うためには、必要な知識と手順をあらかじめ把握しておくことが重要です。
 
この記事では、不動産取引に必要な物件調査の進め方と注意点を詳しく解説します。日々の実務を見直したい方にとっても参考になりますので、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.物件調査は不動産取引に必要な情報を確認する作業のこと
  2. 2.物件調査で押さえるべき5つの流れ
    1. 2.1.1. 売主へのヒアリングを行う
    2. 2.2.2. 現地調査を実施する
    3. 2.3.3. 法務局・役所で法的情報を確認する
    4. 2.4.4. インフラ設備の状況を調査する
    5. 2.5.5. 市場動向と取引事例を分析する
  3. 3.物件調査で注意すべき3つのポイント
    1. 3.1.1. 物件の種類によって調査内容が異なる
    2. 3.2.2. 当事者視点で入念に調査する
    3. 3.3.3. チェックシートを活用して調査漏れを防ぐ
  4. 4.まとめ

物件調査は不動産取引に必要な情報を確認する作業のこと

物件調査は、不動産取引に必要な情報をひとつずつ丁寧に確認する作業です。
 
不動産売買は高額かつ専門性の高い取引であり、十分な知識がないまま進めると価格設定の誤りや契約後のトラブルにつながるおそれがあります。そのため、仲介を担う不動産会社は、以下の内容について調査を行い、事実を明確にする必要があります。
 
・売主への聞き取り
・現地状況
・物件の法的権利関係
・インフラの整備状況
・市場動向
 
これらの内容について丁寧に確認することで、取引当事者が安心して売買に臨める環境を整えることができるのです。

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不動産市場データは、国土交通省などの情報を参照するとよいでしょう。LIFULL HOME'Sは、LIFULL HOME'Sで掲載された物件データおよびユーザーがLIFULL HOME'Sを介して不動産会社に問合せた物件データをマーケットごとにマーケットレポートとして公開しています

参考:LIFULL HOME'S PRESSマーケットレポート
 ≫ 業務効率化の救世主? 不動産情報ライブラリとは。掲載情報や注意点について

物件調査で押さえるべき5つの流れ

ここでは、調査を円滑かつ正確に行うための基本的な5つの工程を解説します。それぞれの工程で何を確認すべきかを把握し、調査の精度を高めていきましょう。

1. 売主へのヒアリングを行う

物件調査において最初に行うべき工程は、売主が把握している範囲の情報を収集することです。主な調査項目は以下のとおりです。
 
・不動産の種別などの基本情報
・借入れの有無と残高
・税金や管理費の滞納状況
・法定相続人の有無
・第三者による占有の有無
・家賃や敷金などの収益情報(収益物件の場合)
 
また、売買契約書に添付する「付帯設備及び物件状況確認書」の内容も、あらかじめ確認しておくと安心です。契約時の説明不足によるトラブルを防ぐことができます。
 
売主へのヒアリングは以降の調査にも関わる重要な工程であるため、漏れのないよう丁寧に行うことが大切です。

2. 現地調査を実施する

現地調査は、実際に物件のある場所に行き、建物や周辺環境を目で見て確認する工程です。図面やインターネット上の地図ではわからない情報を把握するために欠かせません。
 
主な確認項目は以下のとおりです。
 
・地勢(平坦地か傾斜地か、崖の有無など)
・接道状況や道路の舗装状態
・隣接地の利用状況や所有者情報(境界線の確認にも関係)
・最寄りの交通機関の利便性(駅やバス停までの実距離)
・公園・学校・商業施設などの周辺環境
 
たとえば、地面に高低差があると建築作業や排水に影響が出る可能性があります。また、隣地との境界が不明確だと、のちのトラブルにつながることもあるでしょう。こうした点は、現地に足を運ばなければ確認できません。
 
図面だけに頼らず、実際の状況を目で見て丁寧に確認することが大切です。

3. 法務局・役所で法的情報を確認する

法務局や役所での調査では、物件の法的な権利関係や利用上の制限など、取引に影響する重要な情報を確認します。
 
まず法務局では、以下の書類を取得し、物件の権利関係を確認します。
 
法務局で確認すること
・登記事項証明書
・公図
・地積測量図
 
これらの資料から、所有者の名義や抵当権の有無を確認します。登記上の名義人と売主が異なる場合、売却ができない可能性があるため、特に注意が必要です。
 
また、古い建物については、実際の建物がすでに存在しないにもかかわらず滅失登記がされていないケースもあるため、登記情報の正確性も確認しましょう。なお、法務局で取得できる書類は、インターネット上の専用サービスを利用して取得することも可能です。
詳細については、一般財団法人 民事法務協会が提供する「登記情報提供サービス」をご確認ください。
 
一方の役所では、物件の利用に関わる法令上の制限を調べます。
 
役所で確認すること
・建築基準法や都市計画法による制限
・地目の確認
・接道関係
・建築が可能かどうか(建築制限の有無)
 
これらの調査を行うことで、将来的な建築や用途変更の可否などを事前に把握することができ、取引後のトラブルを未然に防ぐことにつながります。

4. インフラ設備の状況を調査する

水道・電気・ガス・下水道といったインフラ設備が整っているかどうかは、物件の利用価値に直結する重要な調査項目です。調査では、設備の供給状況や、必要となる工事内容と費用についても確認します。
 
主な確認項目は以下のとおりです。
 
・電気の容量や引き込み状況
・ガスの種類(都市ガスやプロパン)とメーターの有無
・飲料水の供給方法(水道本管への接続状況など)
・下水道接続や浄化槽の設置状況
 
これらの設備が未整備の場合は、整備の予定や目安となる費用を事前に把握し、売却時の説明に備えることが重要です。なお、インフラに関する調査で所有者の個人情報を扱う場合は、売主から委任状を取得しておく必要があります。
 
集めた調査結果は整理しておき、買主に正確かつ丁寧に説明できるよう準備しましょう。

5. 市場動向と取引事例を分析する

不動産価格には、物件の状態だけでなく、市場全体の動きも大きく影響します。適正な売却価格を導き出すには、以下のような調査が必要です。
 
・近隣エリアの過去の成約事例
・現在売り出されている物件数
・価格の変動(値下げの有無など)
 
不動産価格は、地域ごとの需要と供給のバランスによっても変動します。そのため、物件単体との比較だけでなく、周辺エリア全体の傾向を把握することが重要です。特に実際の成約価格のデータは、買主との交渉時に根拠として提示でき、納得の得られる価格提案につながります。
 
市場動向は価格の妥当性を示す材料となり、取引全体の信頼性を高める効果があるのです。

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境界線は後々トラブルとなりやすいため、現地で確認をしておきたいものです

 ≫ 「土地境界のみなし確認制度」が2024年7月から適用開始

物件調査で注意すべき3つのポイント

物件調査は、ただ項目を確認するだけでは不十分です。適切な視点と方法をもって実施しなければ重大な見落としが発生するおそれがあります。ここでは、物件調査を正確かつ効率的に行うために意識すべき3つのポイントを解説します。

1. 物件の種類によって調査内容が異なる

物件の種別によって、確認すべき調査項目は異なります。構造や管理形態、利用方法が異なる物件においては、同じ調査を行うだけでは重要なリスクを見落とす可能性があるためです。
 
たとえば、一戸建てや土地の場合は、地盤の状態、境界線の明確さ、建物の劣化状況などが主な調査対象となります。一方で、マンションは管理組合による運営が前提となるため、共用部分の管理状況や規約の確認が欠かせません。
 
以下に、物件の種類ごとに押さえておきたい主な調査項目を整理しました。

物件種別
主な調査項目

一戸建て・土地

・埋設物や境界の状況
・隣接道路や近隣建物の影響
・日当たりや周辺環境
・建物の構造や雨漏りの有無
・リフォームや増改築の履歴

マンション

・管理規約やマンション内のルール
・共用部や設備の管理状況
・専有部の設備状態

物件の特性に応じた調査を行っておくことで、買主が求める情報を的確に提供でき、契約後のトラブルも未然に防ぐことが可能になります。

2. 当事者視点で入念に調査する

物件調査では、売主や買主が「どのような情報を知りたいか」を想定し、それぞれの立場に立って情報を整理することが大切です。特に役所での調査では、担当者が「聞かれたことにしか答えない」ケースも少なくありません。
 
たとえば、「◯◯はありますか?」といったYes・Noで回答できる聞き方ではなく、「◯◯にはどのような制限や条件がありますか?」と、具体的な質問を準備しておく必要があります。
 
また、同じ内容でも職員ごとに見解が異なることがあります。そのため、調査日や担当者名を記録しておくと、その後の説明やトラブル防止に役立ちます。

3. チェックシートを活用して調査漏れを防ぐ

物件調査は確認すべき項目が多いため、記憶や経験だけに頼ると見落としが発生しやすくなります。
 
そこで有効なのが、調査項目を体系的に整理したチェックシートの活用です。調査先ごとに項目を分類し記録することで、担当者が変わっても同じ基準での調査が可能になります。
 
以下は実務で利用できるチェックシートの例です。

調査先
確認項目

調査結果記入欄

売主への聞き取り






借入先・借入残高の有無


税金・管理費等の未払い


法定相続人の有無と連絡先


賃貸借・不法占有の有無


収益(家賃・地役権料等)の精算対象


付帯設備及び物件状況確認書の内容


現地調査





地勢(平坦地・傾斜地・崖など)


接道状況・舗装・敷地内電柱の有無


隣接地の利用状況・所有者


最寄駅・バス停までの距離


周辺施設(公園・商店街・学校など)


法務局


登記事項証明書(名義・抵当権・滅失登記の有無)


公図・地積測量図の確認


役所


地目・建築制限・都市計画法などの法令制限


接道義務


インフラ設備




電気の容量と供給状況


ガスの種類・メーター設置状況


上水道・下水道・浄化槽の整備状況


インフラ整備予定・工事費用


マンション管理組合



管理規約・使用細則の有無


管理費・修繕積立金の金額と未納状況


管理状況報告書の入手の有無


このようなチェックシートを活用することで、調査内容の一元管理が可能となり、社内での情報共有や顧客への説明に活用できます。

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物件調査は抜け漏れが発生しないよう社内でチェックリストなどを活用し記録を保存しておくとよいでしょう

まとめ

物件調査は、不動産取引を円滑かつ安全に進めるための土台となる大切な業務です。調査を丁寧に行うことで契約後のトラブルを防ぎ、買主・売主双方にとって納得のいく取引を実現できます。
 
物件の種類ごとに適した視点を持ち、当事者の立場に立って情報を確認する姿勢が重要です。また、チェックシートを活用して調査漏れを防ぐ工夫も、業務の精度を高めるうえで欠かせません。
 
こうした取り組みの積み重ねが、信頼される仲介業務へとつながります。知識を深め、工夫を重ねながら、より質の高い調査を実践していきましょう。

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岩井佑樹 ゆう不動産代表
岩井佑樹 ゆう不動産代表
合同会社ゆう不動産代表。熊本学園大学商学部経営学科卒業。大学卒業後に飲料メーカーの営業として7年間勤務後、宅建を独学で取得し不動産業界に転職。不動産業界歴は10年目となり、現在は不動産会社とWebライティング制作会社を経営。今まで、実体験を絡めたリアルな不動産関連の記事を500記事以上作成。日ごろから、記事を読む人が「どんなことで悩んでいるのか」「どんなことを知りたいのか」など、読み手の方の気持ちに寄り添って記事を書くように心がけている。

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